ヴィンテージたる「神宮前」アドレス

『ヴィンテージマンション』という言葉がある。ここ数年で良く耳にする表現で明確な定義があるわけではないが、共通するポイントを挙げれば、“希少な立地であること”と、“経年にも色褪せない建物デザインであること”、あるいはその両方の要素を兼ね備えているということだろうか。

建物のデザインという観点では、最近のマンションは非常に進化していると言って良いだろう。以前の無味乾燥な人口の建造物といった印象は薄く、様々な意匠を凝らし、居住者にも近隣の景観にも配慮した建物がどんどん増えていて、“歳月を経た独特の趣き”を除けば『ヴィンテージ』と言われているマンションにも引けを取らないものも多い。

しかしこと「立地」に関してはなかなかそういうわけにはいかない。住宅も不動産である以上、その名が示す通り“他に同じものはひとつとしてない”ため、希少な立地に新たにマンションが誕生するには自ずと限界があるからだ。

明治神宮上空より「ザ・サンメゾン神宮前四丁目エルド」をのぞむ航空写真に一部CG処理を施したもので実際とは異なります(平成23年4月撮影)

明治神宮上空より「ザ・サンメゾン神宮前四丁目エルド」をのぞむ航空写真に一部CG処理を施したもので実際とは異なります(平成23年4月撮影)
 

「神宮前」というアドレスはその代表格と言っても良いかも知れない。ごく限られた「神宮前」というエリアには『ヴィンテージ』と呼ばれるマンションが少なくない。今から50年ほど前のマンション草創期、「神宮前」には当時の最新の住まいとでも言うべき意匠を凝らした集合住宅が建ち始めた。時代の先端をいくエリアに時代の先端をいく人々が集うのは必然で、そこに暮すことがステータスともなる。この時代のマンションが『ヴィンテージ』化し、その後も数が増えていった。逆に言えば古くからエリアの開発が進んでいたため現在ではその余地がほとんど残されておらず、一方でこのエリアに対する人々の憧れは全く衰えることなく続いている。結果として、エリアの希少性がますます高まるという循環になっているのである。

「神宮前」という街の究極のバランス

「神宮前」エリアは、東京都心の中でも独特のエリアと言える。世界的にも有名な「表参道」は、通りの一端が若者の街「原宿」であり、逆は大人の集う「青山」と、ファッションやカルチャーの最先端と言える通りである。その最先端の通りが、いかにも日本的なケヤキ並木に覆われている。通り沿いにあった「同潤会アパート」とケヤキ並木のコントラストは「表参道」の象徴的な景観だったが、「表参道ヒルズ」に変わった今でもコントラストの美しさは変わらない。さらに通りの先にある「明治神宮」と隣接する「代々木公園」の広大な緑。この美しい通りと豊富な緑は、なかなか他では得られない環境だろう。

表参道の街並み

表参道の街並み(現地より約330m/平成23年6月撮影)
 

ケヤキ並木沿いに連なる表参道の街並み

ケヤキ並木沿いに連なる表参道の街並み(現地より約330m/平成23年5月撮影)


「表参道」を中心に界隈は、昼夜を問わず、曜日を問わず、常に賑わいを見せている。しかしその一方で、ひと筋中に入るとその賑わいが嘘に思えるような閑静な街並みが現れる。最近はこの住宅街にもカフェやレストラン、ファッションブティックなどもちらほら見られるが、華美な装飾などは無く、あくまでも住宅街としての雰囲気は守られたままといった印象だ。住人への配慮というか、厳に存在する閑静な街に対する敬意の表れなのかもしれない。「神宮前」のエリアとしての特徴は、この稀有なバランスと言える。

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