内陸線の車窓から
戸沢を過ぎるとトンネルが連続し、やがて秋田県内最長の十二段トンネル(5697m)に入る。トンネルは一直線なので、真ん中からは両サイドの出入り口が見えるという。このトンネル部分を含めた松葉と比立内の間29kmは、1989年に開業した比較的新しい路線なので、揺れの少ない高規格な軌道だ。列車もかなりのスピードで快適に走り抜ける。マタギ発祥の地に近い阿仁マタギ駅を過ぎ、奥阿仁と比立内の間の渓谷を渡る鉄橋上で列車は最徐行する。比立内川と打当川が合流して阿仁川となる様子が高いところから眺められる。秋なら周囲は紅葉と黄葉で彩られて圧巻だ。
笑内と書いて「おかしない」と読む面白い駅がある。駅舎のない無人駅だから降りても何もないが、阿仁合などの有人駅ではお土産として笑内駅の駅名標キーホルダーを売っているので、内陸線乗車記念に買っておこう。
笑内を出ると、内陸線のポスター写真などでおなじみの大又川橋梁を渡る。こちらはトラスと呼ばれる鉄骨の覆いがない鉄橋なので、すっきり渓谷美が堪能できる。ここでも列車は最徐行して車窓を堪能できるようサービスしてくれる。
東側を国道が並走しているので、列車写真を撮るのもお手軽なスポットだ(列車本数が少ないのが難点)。
角館から約1時間20分で阿仁合着。「ごっつお玉手箱列車」の終点だ。内陸線自体は、さらに北上し、約1時間で鷹巣に至る(JR奥羽本線の駅は鷹ノ巣)。
阿仁合は内陸線の拠点駅で、本社と車両基地がある。かつては鉱山があり、銅の産出では日本一だったこともある。閉山後はさびれてしまい、静かな山間の集落になってしまったが、往時をしのぶ記念館が駅近くにある。