「ごっつお玉手箱列車」のもてなし
「ごっつお玉手箱列車」の起点は、「みちのくの小京都」と呼ばれる角館。秋田市や首都圏から秋田新幹線「こまち」でやってきた観光客を乗せてのスタートとなる。普通列車の後部に連結されたお座敷車両が「玉手箱列車」で、あらかじめ予約しておかないと乗れない。指定された掘りごたつ式のテーブル付きの席におちつく間もなく、掛りのおばちゃんがトンビ舞茸茶とくりの渋皮煮を運んできた。舞茸茶は、お茶というよりはスープに近い感覚。別に普通のお茶があると落ち着く。食べている途中で、少し揺れて列車は角館駅のホームを離れる。しばらく秋田新幹線の線路と並走した後、分かれて北上する。しばらくは山々に囲まれた盆地を進み、両側には田圃が広がる。
二両編成の前一両は普通列車なので各駅に停車。二つ目の西明寺駅からは、駅に停まるたびに新たな食材が持ち込まれ、すぐに配られる。漬け物、焼き栗、手打ちそば、おやき、ゆべしと続く。焼き栗は、西明寺栗という地元自慢の有名なものだが、秋田県内でもあまり流通しない貴重な品である。新聞紙にくるんで渡されるのが素朴でいい。開けてみると大きくておいしそうだ。松葉駅でおにぎり弁当が持ち込まれひと段落。車窓風景を眺めたり、撮ったりして箸を休めていると、すぐにテーブルは食材で一杯になって嬉しい悲鳴を上げそうだ。おにぎりの米は、あきたこまちだけあって何とも言えず美味である。
いつしか桧木内川に沿って山間を走り、上桧木内でキノコの味噌汁とデザートの鯛焼きが渡されると、これ以上は何も出てこない。配り終わったおばちゃんたちが車内をまわって食材の説明をしたり、車窓や地元のことをしたりとおしゃべりは尽きない。