安い値段に飛びつき我が家を知ってくれている業者を失う
設備を交換するだけとは言っても、関連する補修工事など、簡単には判断できない部分がリフォームにはたくさんあります。
数日後、3社の見積りが出揃いました。F工務店は24万円、G社は2通りの見積り書で31万円(Eさん指定機種)と22万円(G社指定機種)、H社は18万円でした。この結果にEさんは少し腹を立てました。普段から付き合いのあるF工務店はもう少し安く見積りを出してもらえると思ったからです。早速F工務店の担当者に電話をすると「私どもの見積りは適正だと自負しています。リフォームは工事して終わりではなく、後々の不具合の調整なども必要ですからそれなりの費用は頂戴しています。インターネットでも業者は探せると思いますが、そういったところも確認されているんですか?」と反論されました。しかしH社の見積りが頭をよぎったEさんは、F工務店を断り、H社に依頼する旨を説明し電話を切りました。
H社に改めて工事依頼の電話を入れると「後日現場確認に伺います」との返事がありました。洗面化粧台に取り替えるだけの工事だと思っていたEさんは簡単に考え、実際に現場を見てもらうことなくメールで打ち合わせしただけでH社から見積りをもらっていました。しかし実際には、給排水管の一部の劣化が激しく、また床と壁のキズがかなり目立つ状態で、ある程度の補修工事が必要になるとのことでした。
再度出し直しとなったH社の見積り金額は23万円でした。F工務店とさほどかわりません。この程度の金額差ならきっとF工務店の担当者なら値引きに応じてくれたはずです。実際にF工務店の見積りには補修費用が含まれています。普段から現場を把握しているF工務店は当初からその工事を見込んでいてくれたのです。
今更F工務店に頼むのも気まずいため、悩んだ挙句H社に工事を依頼しましたが、非常に後味の悪いリフォームになってしまいました。そして洗面台のリフォームが終わって約1年近くが経ちますが、F工務店の担当者とは連絡できずにいるとのことでした。
安い見積りには工事漏れがないか疑ってかかるべき
今回ご紹介した2つの事例では、いずれも最安値の見積りを鵜呑みにしてしまったために起きたトラブルでした。リフォームは家電製品などと違い、工事の成果を見てからでないと全容がわからないという性質のものです。そんな状況で最安値調査のために相見積りという手法を使うにはかなりのリスクがあるのです。どうしても消費者心理として「1円でも安くリフォームしたい」と思うのはわかりますが、そう考えるよりも「無駄なリフォーム費用を掛けない」という意識に切り替え、必要と思われる工事は見積りに加えてもらい、不適切だと思われる工事や業者には1円たりとも払いたくない、という考え方で見積書と提案内容を比較すべきなのです。そういった目線で見積り書類をチェックしていくと、リフォームは一気に成功へと近づいていくことでしょう。