今回は、せっかく相見積りを取ったのにリフォームに失敗した、あるいはがっかりしたという事例についてご紹介いたします。
「お宅は○○円にできないの?」でリフォーム中止に
最安値の見積りを探すだけが相見積りの目的ではありません。工事を省けば安く出せるのは当然なのですから。
出てきた見積り金額はB社596万円、C社が625万円、D社が650万円でした。
Aさんは、提示価格が一番安いB社の見積り価格を参考に、まずはC社との打ち合わせに挑みます。「B社は596万円でできると言っているけど、C社さんは値段を下げられないの?」と伝えたところ、C社の担当者は「590万円にしますので、契約してください」と、あっさり返答がありました。
Aさんはここで、改めて連絡する旨を伝え、次にD社との打ち合わせを行います。D社担当者にも同じようにB社の見積価格を伝えると、「若干の値引きは可能ではあるが、Aさんのリフォーム仕様を考慮すると、それ以上の値引きに応じることは出来ない」との返信が。そこでD社との契約は白紙に戻し、次の打ち手に出ました。
当初の見積りで最安値を提示してくれたB社の担当者に、C社が改めて提示してきた安い価格を伝えることで、より一層の値引きが可能なのでは? と交渉を試みたのです。
ところがB社の担当者は怪訝な表情でこう答えました。「私どもは当初から相見積りを念頭に、省ける費用は省き、仕様も再検討を重ねて作成した見積りは、言わば弊社独自の設計書類なんです。それを使って他社と打ち合わせするとは大変心外です。今回のお話はなかったことにしてください」。そして帰っていってしまいました。
慌てたAさんはすぐにC社を呼び寄せたところ、担当者は表情を曇らせながらこう語りました。「再度見積り金額について検討してみましたが、Aさんのお住まいを考慮すると、追加費用が発生する可能性が高いんです。もちろん、先日お約束した費用内で抑えることも可能なのですが、何年もしないうちにリフォームした箇所が傷んできてしまう恐れがあります。それでもよろしいでしょうか」。
Aさんは当初の約束と違うと抗議しました。しかし、今回提出された見積り書はいずれも、Aさんが事前に作成した仕様書を元に作成したものだったため、追加工事は当然含まれていませんでした。そのため、それ以上強く言うことができずにC社との契約も白紙となりました。その後に改めて連絡したB社、D社からも打ち合わせを断られ、最終的にはリフォームを断念する結果となったのです。
金額天秤のための相見積りではない
とうとうAさんはリフォームの計画そのものが台無しになってしまいました。そもそも相見積りは著しく相場を逸脱した業者をふるいにかけるためですが、天秤にかけて値引き対決をさせるというものではありません。しかもAさんはプロのアドバイスを聞く前に「仕様書」を作り、上辺だけのプランになっていました。これもリフォームを失敗させる要因でした。複数の業者と打ち合わせをする時には、ただ見積りの条件を提示するだけではなく、自分のリフォームイメージを伝え、予算とプランのバランスを取るにはどうしたらよいのか(あるいはプランをすべて満たすためにはいくらかかるのか)ということを相談し、方向性が定まったところで相見積りを依頼するという手順が望ましいでしょう。
次のページでは、安い値段に飛びついて信頼できる業者を失ったケースについてご紹介します。