震災後の岩手、南部美人を訪ねる
二戸駅。ひなびた東北の風景の中に近代的な建物。少々驚く
近代的な新幹線の駅に驚くが、駅前のバスターミナルでは、のんびりと井戸端会議をするおばあちゃんたち。なにを話しているのかほとんど理解できないけれど、ああ、東北に来たんだと実感し、うれしくなる。
二戸市は人口約3万人。岩手県内陸北端に位置し、北上山地や奥羽山脈と、折爪馬仙峡県立自然公園、金田一温泉など豊かな自然に恵まれた山間の町だ。新幹線の駅から車で南部美人のお蔵がある市の中心部に向かう。東北のひなびた町をイメージしていたが、思いのほか大きく活気があることにまた驚く。きれいな駅や町並みを見ていると、先の震災の影響はほとんど見当たらない。遠くに見えた酒蔵の目印である煙突が近づいてきた。蔵に到着だ。
真夏にも続く仕込み、なぜ?
通りに面した南部美人の販売店。入りやすい雰囲気
やはり通りに面したエントランスにある湧き水。だれもが飲める。清らかな水だ
「震災後、電気が通らず仕込みができなくなったため、予定が延びて今もまだ続いているんです。瓶詰も本火入れも燃料不足でできなかったし。節約のため蒸しの時間を短縮したりして工夫したんですよ」とおっしゃる。
蔵の奥には酒蔵の目印である煙突がそびえる
しなやかでたおやかな「南部美人」と革新の酒「All Koji」
7月なのに、蔵の中ではもろみが発酵中。これも震災の影響であった
また、5代目が生み出したヴィンテージ入りの「All Koji」は、普通、全体米の2割程度を麹にするのに対し、10割すべてを麹にして酒を醸す、全麹仕込みの日本酒。熟成させても美味しいということで、2004年のヴィンテージから揃っている。
2004年のAll Koji。年毎に味わいが違う。飲み比べも贅沢