雑貨/ナチュラル・シンプル雑貨

東北を旅したくなる小さな本

噛み締めるほどにじんわりと、その良さに引き込まれていく東北の町や村。そんな東北をゆっくり味わいながら旅したくなる個性的な本を、主に手仕事に関するものを中心に集めました。普通のガイドブックには載っていない、東北の魅力が充分に感じられる小さな本です。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

■te no te
1500円(税込)

1500円(税込)

東北の手仕事を伝えるとある展示会で、偶然目に止まった本でした。南部鉄器、ホームスパン、木工や陶芸、漆器など、岩手のものづくりについて、ひとつひとつ丁寧に細やかに紹介されています。どれもセンス良く質の高い、気になるものばかりで、読むほどにぐんぐん引き込まれていきます。作品や工房の写真もふんだんに載っており、それぞれの作家にぐっと近寄って、工房で制作の現場を体験したり、臨場感あふれるものづくりの様子がいきいきと表現されています。作り手の笑顔の写真がたくさんあるのも印象的です。

工房の様子なども写真で紹介

工房の様子なども写真で紹介


「te no te」を作ったのは、盛岡のふだんを伝えるミニコミ誌「てくり」を発行している、まちの編集室。てくりの編集スタッフは全て女性であり、地元の人ならではの温かく細やかな視点で、盛岡の人、モノ、風景などを紹介しています。

てくり
http://www.tekuri.net/


■行ってみたいトコロ、盛岡
700円(税込)

700円(税込)

神楽坂にある、手仕事の道具を扱うお店「jokogumo」の店主が作ったリトルプレス。店主の小池さんは東北に魅せられ、特に岩手が大好きで、毎年旅を重ねているそうです。外から来た旅人だからこそ感じられる、町へのほのかな憧れと素直なワクワク感が本の中一面に散りばめられており、読めば読むほど、行ってみたいなぁ、という思いがしみじみと募る本です。

盛岡の素敵な場所の情報たっぷり

盛岡の素敵な場所の情報たっぷり


岩手の工芸を扱う店や工房、そしておいしいものや雰囲気の良い喫茶店、さらにビールの飲めるところまで!小池さんが心から楽しみ愛情を持って町を巡っていることが、文章からもひしひしと伝わってきます。最後のページには町の地図も載っているので、本を片手に気軽に散策が楽しめます。

くらしの知恵と道具 jokogumo
http://www.jokogumo.jp/


■oraho 会津のいいもの
Vol.1、VOL.2 各630円(税込)

Vol.1、VOL.2 各630円(税込)

oraho(おらほ)とは、福島県・会津の言葉で「私の土地」「私の住んでいるところ」という意味だそうです。会津出身、現在は東京で編集者として働く山本晶子さんが作ったリトルプレス。現在Vol.1、VOL.2の2冊が出ていて、1では会津木綿、2では漆をそれぞれ特集しています。質の良い農作物や食品の作り手、おいしいものが食べられる食事処などもご紹介しています。住んでいたときには気付かなかった、故郷を離れて初めて分かったという会津の魅力について、山本さんに伺ってみました。
「素朴で、あったかくて、不器用なまでにまっすぐなところでしょうか。土地柄も人柄も地味だし、一見、素っ気ない感じもあるんですけど、懐に入ると、あったかいです。会津の手仕事なんかを見ていても、そういうのが滲み出てていいんですよね。華やかさはないけれど、丁寧な仕事がなされていて、使い込むほどに味が出てくるものが多いです。職人さんたちも、頑なで、信念持っている人が多いですね。」

会津自慢の手仕事を紹介

会津自慢の手仕事を紹介


そして山本さんに聞いた、「会津三泣き」という言葉。
会津に初めて来ると、その閉鎖的・排他的なところに泣かされる。
会津に暮らし始めると、会津人の頑固さに泣かされる。
会津を去るときには、会津人の人情が忘れがたくて泣いてしまう。

会津の風土・文化・気質をよく表している言葉だそうです。心にじんと温かいものが広がる、いい言葉です。

oraho
http://www.oraho.info/


■みやぎ手仕事めぐり
525円(税込)

525円(税込)

荒蝦夷手芸部を主宰し、おやつ大臣を名乗る編集者、滝沢真喜子さんと、ジュンク堂仙台ロフト店で働きつつ、イラストレーターとして活動する佐藤純子さんの作った、手のひらに乗るほどの小さなかわいい本。それぞれ岩手と福島で育った、共に東北生まれ。二人が宮城の手仕事をめぐってあちこちの工房を訪ねる様子が面白楽しく紹介されています。

とぼけた風情のイラストもかわいい

とぼけた風情のイラストもかわいい


導入部分には、佐藤さんのほのぼのとしたマンガが描かれており、訪ねた先々で出会った人たちへの愛情がじわりと滲み出ています。意外と知られていない宮城の手仕事について、作り手との会話をふんだんに交えながら紹介。その場の雰囲気が伝わってくる、興味津々のやり取りが想像できます。絵と文だけのシンプルな本ですが、読みごたえたっぷりの内容です。

丸善・ジュンク堂書店公式サイト
http://www.junkudo.co.jp/miyagi_teshigoto.htm


■プレリュード
100円(税込) ※売上は全額、東日本大震災の義援金となります。

100円(税込) ※売上は全額、東日本大震災の義援金となります。

こちらは本ではなく、三つ折りにした一枚の紙。広げるとA3のペーパーになり、nakabanさんの絵と、市川慎子さんのエッセイが寄せられています。市川さんはインターネット古本屋「海月書林」の店主で、小冊子「いろは」の編集人でもあります。福島県郡山市に3年ほど住み、その時に東北をあちこち訪ねた記録をまとめて本にしようとしていた矢先、震災となりました。「東北おやつ紀行」(中央公論新社)が刊行予定で、これはその番外編として作られたものです。

裏には美しい東北の風景が!

裏には美しい東北の風景が!

プレリュードは市川さんの愛車の名前で、この車で回っていたことからタイトルに。産直や道の駅など、地元の魅力的な食べ物と、その土地の素朴な様子がのんびりと語られています。裏側は一面、nakabanさんの描いた東北の冬山の風景。ポスターのように飾ることもできます。

プレリュード
http://www.kurageshorin.com/pr.html

どの本も、小さな出版社や個人による制作で、あまり一般の書店でみかけることはないかもしれません。しかし、その分思い入れが深く、普通の観光ガイドブックなどにはない興味深い内容が詰まっています。旅のお供にはもちろん、東北を知るきっかけにも、ぜひ手に取ってみてください。
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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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