ミドシップ2シーターであることを貫き続けるレイジングブル
2011年のジュネーブショーでお披露目された、ムルシエラゴの後継となるランボルギーニのフラッグシップモデル。伝統に基づき1993年にスペインのサラゴサ闘牛場に登場した勇猛な雄牛の名が授けられた。ボディサイズは全長4780mm×全幅2030mm×全高1136mm、ホイールベースは2700mm。車両重量は1575kgで前後重量配分は通常でフロント43%:リア57%となる
プランシングホースのフラッグシップモデルは、最近、過去(デイトナ以前)に回帰をはたしてエンジン前置きの後輪駆動(=FR)の2シーターGTスポーツクーペとなっているが、レイジングブルはミウラ以降の伝統を守り、ミドシップ2シーターであることを貫き続けている(とはいえ設立最初期には猛牛の旗艦モデルもまた豪華なFRのグランツーリズモだった)。
特に、V12エンジンを縦に置き、ミッションをキャビンに向けて配置する独特のレイアウトは、カウンタック~ディアブロ~ムルシエラゴと続く、ランボルギーニのオリジナルパッケージ。そのレイアウトこそが、低く平たくなだらかな弧を描いたユニークなシルエットと、アイコンである例の“シザードア”を生み出した。
50年ぶり、100%新設計のモデルチェンジ
10年に一度のフルモデルチェンジ。先代にあたるムルシエラゴの4099台目がラインオフしたのが昨年末のこと。そして、2011年の2月には、伝統継ぎし者、新型フラッグシップのアヴェンタドールLP700-4の生産が始まった。最近のモデル命名法に従って意味を解けば、700馬力の4WDモデル、である。
今回のフルモデルチェンジで特筆すべきは、100%新設計という点だ。ムルシエラゴはディアブロをベースに進化していたし、ディアブロにはミウラ&カウンタック由来のエンジンが積まれていたから、パワートレインやシャシー、ボディストラクチャーを全て、ひとつのパーツも取りこぼすことなく一新した今回は、大げさに言うと、50年ぶりの全刷新というわけである。
それゆえ、注目すべきポイントは広範囲に渡っていて、話題は尽きないのだけれども、知っておくべき要点のみかいつまんでまとめておくと、次のようになる。
1:完全新設計の60度6.5リッターV12自然吸気エンジン。軽量かつコンパクト。カウンタック~ディアブロ時代に回帰するショートストロークタイプで700psを発揮する。
2:新世代のシングルクラッチシステム=2ペダル7速ISRトランスミッション。シフティングロッドで次ギアをスタンバイさせることによりガヤルドのeギア比-40%の変速タイムを実現した。
3:軽量かつ精密制御のハルデックス4タイプ電子制御式4WD。トルク配分は前0:後100~前60:後40。
4:軽量で強固なCFRP(カーボン繊維強化樹脂)モノコックボディ&キャビンを採用した。前フェンダーはアルミニウム、後フェンダーはGFRP、エンジンフードはCFRP。
5:CFRPボディの前後にアルミニウムサブフレームが結合され、プッシュロッド式のダブルウィッシュボーンサスペンションを搭載する。
特に注目してほしいのは4のCFRPモノコックキャビン。これは、これまで、台数限定モデルかたいへん高額な少量生産のスーパーカーにおいてのみ、採用されていた構造である。
ランボルギーニは、新たにCFRP生産工場を本社近隣に建設することで、ボディのみならず全CFRPパーツの完全自社生産(マテリアルはサプライヤーから供給されるが)を達成し、CFRP構造物の生産精度をさらに上げ、生産時間を短縮し、生産コストを削減、年産600台規模のスーパーカーにおいて、CFRPモノコックキャビンを現実のものとしたのだ。
目指すは、さらなる軽量化とさらなる高性能化であった。と同時に、今流行りの“エコテクノロジー”(直噴やダウンサイジング、ハイブリッドなど)に頼ることなく、猛牛なりのエフィシェンシーをも目指したのだ。