企業年金・401k/サラリーマンの年金・退職金

確定給付企業年金の仕組みと知っておくべき注意点は?

確定給付型の企業年金、といきなり言われても困るかもしれません。しかし日本で一番普及しているのはこのタイプの企業年金。基本的な仕組みを押さえておきましょう。

山崎 俊輔

執筆者:山崎 俊輔

企業年金・401kガイド

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確定給付企業年金って?

今まで長く利用されてきた企業年金は「会社が積み立て」「会社が運用・管理」「会社が給付」と、会社が最初から最後まで責任を持ってくれるものでした。

こうした企業年金は「給付が確定している」ということで、確定給付型の企業年金と呼ばれます。確定給付型の企業年金には、「確定給付企業年金」と「厚生年金基金」があります。前者はそのものズバリの名前ですね。

確定給付型の企業年金(「型の」とわざわざ言う場合、上記2制度両方を指す)は、会社側が責任を持って準備をしてくれるため、従業員としては安心して仕事に専念できることがメリットとされてきました。

ただし近年は日本航空の例で明らかになっているように、「給付が減る」可能性もある制度になっています(つまり確定していない)。とはいえ、そもそも会社の存続も給料やボーナスも約束されていない時代なのですから、退職金や企業年金にもリスクがあるのは当然だったわけです(もちろん、全額もらえないようなことのないよう、資産管理は慎重に行われているという点も同時に指摘しておきます)。

ですから、現代では会社任せではなく制度について現役のうちから知っておくことが大切です。それでは、2つの企業年金制度について見てみましょう。

まもなく50年の歴史!厚生年金基金

約81万人(2017年7月/企業年金連合会)が利用しているのが「厚生年金基金」という企業年金です。歴史が長い企業年金制度であり、もうすぐ50年を迎えます。一時期は1000万人以上が利用していましたが、確定給付企業年金に制度変更する会社も多く今では半減しています。

「厚生年金」と名前のつくところから、国の制度と誤解しがちですが、実態は企業年金のひとつです。ただし「もともと国からもらう厚生年金の一部(代行部分)」と「独自の企業年金部分(プラスアルファ部分とか加算部分という)」の2層建てになっているのが厚生年金基金の特徴になります。

つまり、厚生年金基金は国の年金制度と企業年金制度にまたがっているわけです(年金額が「こんなにたくさん!」と思っていても、その分、国の厚生年金が減っているということもある)。

厚生年金基金の独自部分はあまり手厚いわけではなく、月額2万円程度という調査もあります。それでも一般には終身年金になっているため、長生きする限りずっともらえる貴重な収入源です。

厚生年金基金は、業界団体を母体に作られることが多く「○×業厚生年金基金」のような形が中心です。そこに、同じ業界の中小企業がたくさん加入しています。企業によっては、厚生年金基金以外にも退職金や企業年金を用意していることがあるので、チェックしてみるといいでしょう。

制度開始10年にしてナンバー1!確定給付企業年金

約818万人(2017年7月/企業年金連合会)が利用しているのが「確定給付企業年金」という企業年金です。こちらは2002年4月に新しい法律ができまだ10年弱の制度ですが、すでに国内ナンバーワンの制度になっています。その理由は適格退職年金と呼ばれる旧制度(2012年3月末で廃止)と、厚生年金基金から制度変更してきた企業が多かったからです。

確定給付企業年金は厚生年金基金とは違って、「独自の企業年金部分」のみで管理運営されます。設立の方法も、「1社単体」「グループ企業」というように独立性が高いのが特徴です(厚生年金基金のように業界団体で設立する例はほとんどない)。

確定給付企業年金については、現在大企業も中小企業も利用する制度となっており、その年金額は各社まちまちですが、月額5万~6万円という調査もあります。

また、確定給付企業年金では終身年金である場合もあれば、有期年金として5年や10年、あるいは15年という期間限定で給付を行う例も多くなっています。

こうした制度の条件については、社内の規定やガイドブック等をチェックしなければわかりません。ぜひ自分の会社の制度を知っておきたいところです。

なお、確定給付企業年金については「給付が確定」していない制度もあります。キャッシュバランスプランと呼ばれるものがそれです。この場合は「会社が運用した実績」「国債の平均利回り+アルファ」を約束するというような形にしてあるため、世の中の金利や経済環境によって受取額が変動してきます。「金利変動型」などと説明されていたら、キャッシュバランスプランということになります。

確定給付企業年金のメリットと注意点

確定給付型の企業年金は、ひとりひとりが在職中に運用のことを考えなくていいメリットがありますが、必ずしも受取額が保証されているわけではないことに注意が必要です。

老後のお金の準備として退職金や企業年金は大きな柱ですが、これだけに頼らず自分でもお金の準備を考えておくといいでしょう。

とはいえ、何も手を打っていないわけではなく、専門家が集まって効率的な運用計画と管理をしたり、国の厳しい財政ルールにより積立不足が拡大しないようなチェック機能もあります。「知らない間に企業年金の資産が半分になっていた」というような事態はありません。

水準の引き下げがやむなく行われる場合も、労使間で話し合いが行われ、さらに厚生労働省がOKを出さないと有効になりませんので、会社が勝手にある日突然引き下げるようなこともありません。

確定給付型の企業年金があることで、年金払いで退職金を受け取ることができることは老後の生活の安定にとってとても役立ちます。年金受け取りしている間も会社は資産管理しているため、利息もつくので、一括で現金をもらって、その後自分で運用しながら取り崩すよりも効率的です。

確定拠出年金(日本版401k)のシェアが高まっているものの、まだまだ確定給付型の企業年金は日本に広く普及しています。自分の会社にあったら、ぜひ内容を調べてみてください。

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