湯山玲子『四十路越え!』
筆者は、現代女性の生きざまについて本域に斬り込む著書で人気を博しているクリエイティヴ・ディレクターの湯山玲子さん。
女にとって、40越えは鬼門だ。30代は、まだまだ攻めの姿勢で生きていていい時代。実際に恋も仕事も20代以上に30代を楽しみ、輝いている女性がスタンダードになったけれど……。さすがに、四十路の壁は薄くない。
そんな四十路への不安の理由を明確に浮き上がらせ、すーっと晴らしてくれるのが本書だ。すでに四十台をかけぬけてきた、バブル世代の中でも上のほう――現在は、アラフィフの著者、湯山さんの“過ぎてきた40代”の記憶と知恵は至極、ためになる。
時に興味深かった「四十路と恋愛」の章について、これから40代をむかえる20代・30代にむけて――本書の読みどころをピックアップすると同時に、自分なりに分析してみたい。
「恋愛できなきゃ女は終わり」という思い込みは捨てること
結婚願望はあるのに、なかなか結婚までいたらない女性たちの多くは、「ちゃんと本気で恋愛して結婚がしたい」という。その気持ちはよく分かるし、恋愛と結婚は別とは限らない。けれど、一方では、「本気の恋愛なんて誰もができるものではない」ともおもう。各世代の女性誌で根強い人気を誇る恋愛特集。今や50代向けの女性誌にだって「いくつになっても恋する女でいる」という文字が踊り続けて言える。日本全国、社会のムードは、恋愛礼賛だけど、こんなにも、恋愛特集が、そして恋愛マニュアルが求められているのは、実は「日本人は恋愛が下手だから」にほかならないのではないかとも思う。
本書では、ラテンな恋愛映画『それでも恋するバルセロナ』を引き合いに出しながら、「恋愛を本当の意味で実践できるのは、ラテンな人々だけ」だと語る。情熱的な口説き文句も、強烈な嫉妬も、ロマンティックなデートやダンスも、ラテンな人種は恋愛の作法を「文化」として獲得しているし、DNAにまで恋愛が染みついている稀有な人々なのだ。
日本人のように、恋愛とは、決して頭の中の空想や理想ではないのだ。日本女性の考えている恋愛は、非常にあいまいで観念的なものだと湯山さんは語る。たしかに、その通り。
さらには、「恋愛と呼ばれているものの大いなる原動力ははっきりいって、性欲にあります」とも。深い見解。そう考えると、無駄な恋愛欲(王子様願望)は淘汰され、「恋愛して結婚したい」なんて観念に振り回されることの無意味が身に沁みると思う。