初代に囚われなかった新たなデザイン
2004年に日本に導入された5ドアハッチバック。国内ではすでに販売を終えている。ベーシックなパンダ(172万円)と装備充実のパンダ マキシ(192万円)をラインナップしていた。サイズは全長3535mm×全幅1590mm×全高1535mm(パンダ)
ほとんどの人にとっては、別に馴染みでも何でもないクルマだろうが、なぜか名前だけは知られているのではないか。すごいことだ。パンダという名前そのものの威力だったとしても。
初代パンダは、ジウジアーロデザインによる秀作で、いまだにファンも多い。ごく最近まで、イタリア以外で生産されていたため、マニアが乗るぶんには不自由しなかった。今、新車で売られているのは、2代目となるパンダである。
500と違って、過去に囚われることなく、コンパクトカーとしての新しいデザイン性に挑んだ、これもまた名作であろう。背の高い、ほんの少しSUVを思わせるカタチは、十分に個性的。ポップなインテリアデザインも、注目に値する。
デザインだけじゃない。日常生活における、必要にして十分なパワー、ポテンシャルの非常に高いシャシーパフォーマンスなど、走りの完成度も、実は高い。そのことは、これをベースとした500が、望外に良く走ってくれることからも分かる。イタリア車は、ベースモデルであっても、走りをないがしろにしない。それはまた、国民性のなせるわざ、なのかも知れない。
だから、このクルマもまた、500や他のイタリア車と同様に、乗っていて心が妙に浮き立つクルマである。何がどうというわけじゃない。パンダであること、フィアットであること、イタリア車であること以外に、明確な理由を見つけられそうにもない。
逆にいえば、クルマは、実に“土着色”のある工業製品だということ。実用車から高級車まで、そこにはそのクルマの生まれた国や地域の、歴史や文化、民族、生活、環境、気候がすべて内包されているのではないだろうか……。
イタリア車に乗れば、イタリア人になった気分に。グローバル化の進む今、その度合いが他の国のクルマに比べて一段と強いこともまた、イタリア車の魅力というわけだった。