日本相撲協会は、八百長問題の件で二人の力士を解雇しました。今回の解雇が法的に有効と言えるのかどうか検討してみたいと思います。

力士が「労働者」にあたると力士にとって有利

力士が「労働者」である場合、労働契約法などにより解雇が制限される

力士が「労働者」である場合、労働契約法などにより解雇が制限される

協会は「解雇」と言っていますが、そもそも力士は日本相撲協会に雇われて給与をもらっている「労働者」なのでしょうか? 日本相撲協会の規定上、力士は日本相撲協会に所属していると定められていますが、「労働者」であるとは規定されていません。力士が「労働者」である場合、労働契約法などにより解雇が制限されます。つまり、解雇は無効と判断とされやすくなるのです。判例では、力士は「労働者」であると判断した事例は現時点ではないので、裁判所の判断が注目されます。

 

どういった場合に解雇は無効になるのか?

■解雇に合理的理由があるか?
力士が労働者にあたる場合、解雇に「合理的な理由」がない場合、解雇は無効となります。今回は解雇の原因となった八百長があったという日本相撲協会の判断の合理性が争われます。

特別調査委員会の伊藤滋座長によれば、力士らの供述、携帯電話のメール、映像の検証、携帯電話提出についての対応の仕方などから、八百長の事実があったと認定したようです。物証である携帯電話のメールの内容から、八百長の事実をどこまで認定できるかが、八百長の事実があったか否かの判断のポイントになりそうです。

■処分は重すぎないか?
八百長の事実が認められたとして、解雇処分は相当な処分だったのでしょうか。解雇された場合、力士は二度と日本相撲協会に帰属することができなくなります。日本相撲協会の規定では、八百長相撲をした場合、解雇処分よりも軽い、出場停止、減俸、けん責処分を下すことも可能であるにもかかわらず、あえて一番重い処分を下したことは適切だったのでしょうか。八百長行為に対して、解雇処分が相当なものといえるか否かは、他の処分事例との均衡から判断されます。

大麻の使用を理由に解雇された裁判例では、日本相撲協会が薬物濫用につき規制を強めていたなかで、力士が大麻を使用したことが日本相撲協会の信用、名誉を毀損する行為であるとして解雇は有効だと判断されました。今回の解雇も、長年日本相撲協会が否定し続けてきた八百長相撲が認められたことが、日本相撲協会の信用、名誉を毀損した点は同様でしょう。また、八百長疑惑の発端が賭博に絡んでいることから、八百長と賭博との関係がどの程度あったかや、野球賭博に関する処分との均衡も問題になりそうです。

手続きは適切だったのか?

元力士は、適切な弁明の機会が与えられることなく処分が下されたと主張しています。日本相撲協会の規定には、力士に弁明の機会を与えなければならないといった規定はありませんが、解雇という重い処分を下す以上は、処分を受ける力士に相応の弁明の機会を与える必要があるでしょう。もっとも、八百長の事実が認められた場合は、いずれにせよ解雇処分自体が無効になることは難しいでしょう。

今後の裁判で、どういった事実が明らかになっていくのか注目していきましょう。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。