ポイント3:自分一人で背負わず社会の仕組みを利用
先に紹介した厚労省の同調査によると、要介護者と同居している主な介護者の続柄は、「配偶者」25.0%、「子」17.9%、「子の配偶者」14.3%となっており、男女別で見ると「男性」28.1%、「女性」71.9%と圧倒的に女性が介護を担っています。この背景には「長男の嫁が面倒を見て当然」「親不孝者な娘だと白い目で見られる」など、「家族が介護して当たり前」という「家族介護神話」の存在も影響しているかもしれません。
しかし、本当に「日本では昔から家族が介護してきた」のでしょうか? 『遠野物語』には、ある地域において昔は60歳を過ぎた高齢者はすべて、それまで暮らした家を離れて、決められた場所において共同生活をする習わしがあった、という記述があるそうです。また、全国社会福祉協議会の資料によると、1920年には長子が父親と死別するのは33.7歳、母親とは37.9歳だったそうで、まさに「親孝行、したいときには親は無し」。この時代には長期にわたる高齢者介護はそんなに一般的ではなかったと推測できます。
しかし、1991年では、同じ調査で父親との死別が47.3歳、母親とが55.4歳に変化。医療の発達などにより「親が長生きする」という状況が生まれ、それが「家族による介護」の発生につながったと考えられます。そうなると「日本では昔から家族が介護してきた」というのは、まさに「神話」なのかもしれません。ぜひ、胸を張ってさまざまな国や地域の制度、企業の支援を利用しましょう。家族だけ、女性だけで介護を負担する必要は全くありません。
ポイント4:相談できる場や仲間をもちましょう
そうはいっても、さまざまな状況から妻が、嫁が、娘が主な介護の担い手になることは十分考えられます。そのような状況になった場合、ぜひ相談できる場や仲間を持つようにしましょう。知識や情報を得られる場となるだけでなく、愚痴や悩みを打ち明けることで、心の負担を軽くすることができます。介護の辛さは経験者にしか分からないデリケートな部分もあります。ぜひ理解しあい、共感し合える場や仲間を積極的に作りましょう。
ポイント5:介護者への感謝の態度を忘れずに
最後は、介護者でなくその周囲の人に向けての注意点になります。親世代の介護に苦労し、悩んでいる女性が一番辛いのは、介護そのものよりも「感謝の気持ちのないパートナー」だといいます。「俺は仕事があるからお前に任せてある」「嫁の義務」「お前の親なんだから俺は関係ない」こんな態度で、介護者である妻に対して感謝や理解のないパートナーも少なくありません。
さらに、こういう人に限って「将来の自分の介護も妻や子供がしてくれるはず」のように甘えている傾向があります。親や義父母の介護をしている妻に感謝の気持ちのない旦那様は、ご自身が要介護になった時に周囲からそっぽを向かれると覚悟しておいた方がよいでしょう。できる限り、自分も一緒に介護に参加する。それも難しいならば、せめて感謝の態度や言葉で妻をねぎらうことが大切です。
ご両親がご健在な皆さんも、この機会にぜひ夫婦で「介護」について話し合ってみることをおすすめします。