名医、横山淳一教授(慈恵会医大)と料理研究家の有元葉子さんのコラボで、他に類を見ない糖尿病食のレシピ本が世に出されました。『医師と料理家がすすめる   糖尿病レシピ』(筑摩書房)です。ヘルシー&ナチュラル、一目見ただけでおいしさが伝わります。しかしこの本の真価は、改めて医学的食事療法の基本を考えさせてくれるところにあると思います。グルメな糖尿病者は、まずこの料理を安心して楽しんでください。そして、食事療法の一番大切なところを学びましょう。

医学的食事療法とは (Medical Nutririon Therapy)

言うまでもなく医学的食事療法とは、食事を通して病気を治療することです。以下、「食事療法」と短く書きますが、明らかに最も効果のある治療法であることを理解しましょう。

よく食事療法や運動療法で血糖コントロールが得られなくなると、薬物療法に移ると言われますが、実際には経口薬やインスリンは食事療法をサポートする立場にあるのです。正しい食事に薬を合わせるのです。その逆ではありません。

だから、薬が必要になったら、食事療法もより一歩前に進めなくてはなりません。そうしないと薬が十分に効かないことがあるだけでなく、副作用のマイナス面も出てしまうからです。

アメリカの指針ですが、2型糖尿病の診断時に食事療法に取り組めば、HbA1Cが6~12週で1~2%下がります。脂質異常も高血圧も改善します。こんなに明白に効果があるのに、食事療法はとても難しいものです。食事療法の効果を実感できず、誰だって食事の習慣を変えるのは苦痛を伴います。患者教育だっておざなりのカロリー割当てしかできません。これには何かが足りないのです。

2型糖尿病は食事依存型、運動依存型の糖尿病

12年前までは2型糖尿病のことをNIDDM(インスリン非依存型糖尿病)と言っていました。その伝に従えば2型は食事依存型であり、運動依存型です。これを毎日守るのはつらいことですね。

特に医師から減量ばかり要求されるのは不愉快なものです。日本の食事のカロリー計算はBMI 22の「机上の空論」から成り立っていますからなんとも腹立たしい限り……。ただ、減量は美容上の問題だけでなく、血糖コントロールを容易にするだけのものでもありません。医師たちは、経験から2型糖尿病治療を成功させるには正しい食習慣が不可欠なことを知っているのです。

本来ならば体重の話だけでなく、ヘルシーな食事の指導が必要なのです。
そして、その「糖尿病レシピ」はそこに的をしぼっています。ありがたいことです。

糖尿病食事療法のゴール

果物

地中海によって欧州・中近東・アフリカが一つに結ばれているので、一年中豊富な野菜・果物に恵まれているヘルシーな文化圏です

糖尿病食事療法の最終目標は、毎日満足できる食品・食材を自信を持って選べるようになること。理想的な血糖、血圧、血中脂質を維持し、個人の好みを犠牲にしない食事です。

日本の食事療法はカロリー重視の食品交換表を基本にしています。これは同じような内容の食材をグループ分けしたものですが、理屈は通っていても応用が利きません。

食品交換表の本家、アメリカの表では穀類(でんぷん)、果物、乳製品の主要炭水化物食品を15g単位で揃えていますから、ある昼食で仲間と一緒に炭水化物60gの「チキン・カチャトーレ添えのスパゲッティ」を楽しむことが出来ます。本来ならば割当てられていた果物と乳製品の炭水化物30g分を夕食へ移動させればいいのですから。一回の食事の炭水化物の総量は変更しない。これが食事療法の基本です。

「食品交換表のコンセプトを理解できない」と言う人がいます。一方で、とても上手に使いこなしている人もいます。かく言う私にとって、食品交換表は全くの役立たずです。性格に合わないのだからしかたありません。

今日の精製された食材、加工食品のまま、量だけを減らすと必要な栄養素が欠乏します。栄養士の足立香代子さんの計算では、一日あたり10mg取るべきビタミンEが、糖尿病食の1600kcalでは5.4mgしか取れないそうです。これでは糖尿病食は不健康食ですね。でも、1600kcalの指示は正しい! では、どうする? 食材をヘルシー&ナチュラルにするしかありません。なるべく栄養豊富な未精製の食材を選び、シンプルに調理しましょう。

この本にはその極意が惜しげもなく書かれていましたので、ぜひご一読を。

■関連リンク
こんなにおいしくていいの?! 医師と料理家がすすめる 糖尿病レシピ(Amazon)
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