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お茶の様々な楽しみが広がる工芸茶専門店 クロイソス

中国茶の中でも、ガラスポットの中で水中花のように優雅で美しい花を咲かせるお茶を工芸茶といいます。アッと驚いて、うっとり癒される、楽しい工芸茶のお店をご紹介。バレンタインのプレゼントや、新入学・入社のお祝いなどにもおすすめです。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド

まぼろしを見ているような可憐で儚い美しさ。

まぼろしを見ているような可憐で儚い美しさ。

中国4000年の歴史と言われますが、工芸茶の歴史はまだ浅く、1986年、安徽省黄山(あんきしょう こうざん)の汪芳生(おうほうせい)氏によって発案されました。この地域は上質な茶葉の産地としても知られ、元々茶園主の五代目として生まれた汪氏。あるとき自分の母親が、ちんげん菜をぎゅっと束ねて干し野菜を作っているのを見て、お茶を束ねることを思いついたそうです。

茶葉は一枚一枚手摘みで、制作は全て職人の手作業によるもの。中国十大銘茶といわれる安徽省の黄山毛峰(こうざんもうほう)、または世界三大銘茶のひとつ祁門(キーマン)の茶葉をベースに、漢方効果のある花を組み合わせ、様々なメッセージや願いを込めて作られています。優雅で気品のある美しさと香り高い味わいから、中国政府によって、外交のための献上品(国礼茶)にも選ばれています。


どれも凝ったつくりで、見ていて飽きません。

どれも凝ったつくりで、見ていて飽きません。


工芸茶専門店「クロイソス」を訪ねると、カウンターの上にたくさんの工芸茶が並んでいました。このまま飾っても楽しく、まるでブローチのようなかわいさです。花束以外にも、女の子や竜、鳥、魚、ネコなどユニークなかたちのものがあって、ほのぼのとした風貌に思わず笑みがこぼれます。全てには意味があり、例えば「奇人茶」なんていうちょっと変わったお茶もありますが(おとぼけ顔の人の形をしたお茶です!)、「個性は人の心を動かす」という想いが込められているそうです。日本からのアイディアを取り入れ、中から桜の花がふわりと出てくるものもあり(一番上の写真)、これからの季節のお祝いや縁起のよい贈り物として喜ばれそうです。

工芸茶の中でも、健康に良く芸術的価値の高いものは、汪氏によって「康藝銘茶」と命名されています。これらはオーガニック認定を受けた、自らの畑で栽培される特級茶葉を使っています。摘み取った茶葉をすぐに加工するため、制作は4月~7月に集中して行われます。毎年その季節にしか作れないため、生産数は限られています。

店内にて。ウサギ、ティーポットなどかたちも面白い!これを湯の中に入れると、みるみる花が開きます。

店内にてお茶をいただきました。ウサギ、ティーポットなどかたちも面白い!これを湯の中に入れると、みるみる花が開きます。

店内では、その日のおすすめ2種として、お茶の試飲もできます。この日は写真左のウサギの形のお茶と、右端のキーマン紅茶で作られた牡丹型のお茶でした。ウサギのお茶は緑茶ベースなので、一煎目は主に清らかな香りを楽しみ、二煎目以降、じわじわと味わいが深まっていきます。日本茶とはやや違い、苦味はなく、すっきりとした飲みごこちです。ガラスの中でふわっと花が開いていく様子を眺めながらゆったりお茶を味わうなんて、極上の寛ぎタイム。淹れ方も難しくはなく、沸騰したお湯を注いで2,3分、茶葉が開くのを待つだけです。1つの工芸茶で2,3人分、差し湯をして3煎目くらいまで美味しく楽しめます。

ガラスのポットがあると花の様子をより楽しめます。ポットは店でも販売。

ガラスのポットがあると中の花の様子をより楽しめます。ポットは店でも販売。


飲んだ後は、ガラスのグラスや瓶に入れておけば、観賞用のインテリアとして一週間くらい楽しめるそうです。できれば毎日水を取り替えるとよりよいそう。さらにその後はしっかりと乾燥させ、オーガンジーの布袋などに入れて、クローゼットや靴箱、冷蔵庫の脱臭に使うことができます。茶葉に含まれるカテキンが、気になる匂いのケアに有効なのだそうです。

お店では、古伊万里の酒器で出していただきました。お菓子は割り氷とホロホロクッキー。

お店では、古伊万里の酒器でお茶を出していただきました。お菓子は割り氷とホロホロクッキー。


お茶と一緒にお茶受け菓子もご用意くださいました。お茶の味を引き立て、お互いがより美味しく味わえるようにと全国からいろんなお菓子を取り寄せて調べたところ、写真の2品が一番合ったのだそうです。左の白い氷のような一品は、四天王寺の参道にある和菓子店河藤の「割り氷」。見た目は硬そうですが、寒天でできているので、口の中で柔らかに溶けていきます。こちらは緑茶に合わせて。右はほろほろとした食感と繊細な味わいのクッキー。紅茶に合わせるとより美味しくいただけます。お茶の味をより際立たせるには優しい甘みのシンプルなお菓子が合うようですが、食事と一緒にいただいても料理のじゃまをせず、和洋(もちろん中華)何にでも合うそうです。

スーパーポテト出身、飯島直樹氏によるデザインの店内。

スーパーポテト出身、飯島直樹氏によるデザインの店内。


クロイソスには、汪氏の工房で作られる康藝銘茶が96種類、さらに汪氏の元で修行した一級茶師の作るブーケのような華やかな工芸茶が20種並んでいます。値段は200円~2000円くらいまでありますが、平均的には400~500円のものが一番多いようです。かたちやその意味を考えながら、あれこれ選ぶのが楽しい。店の内装デザインは、世界的に活躍するデザイナー飯島直樹氏によるもの。オフホワイトを基調としたすっきりとシンプルな装いでありながらホッと和むような温かみを備えています。おもてなしという意味合いから、店の一角には凛とした空気を放つ、茶道の茶釜が飾られていました。

クロイソスのオーナー、合田由佳さんはかつては専業主婦をしていたそうです。たまたま旅行雑誌で見かけた工芸茶のあまりの美しさに強く心惹かれ、中国へ行くたびに買い求めては、友人にプレゼントしたりしていました。そして子育てが落ち着いた頃、「このお茶の魅力をもっと世の中に広めたい」との思いから、初めてビジネスを学び、ひとつひとつ手探りしながら会社を立ち上げました。
「汪先生の工房にはもう何度も通っていますが、市内から車で3時間、さらに人とラバしか入れないような山道を1時間てくてく歩いてやっとたどり着きます。山頂に着くころにはもうへとへと。でもそこは自然に囲まれた空気の澄んだ素晴らしい場所で、そこでいただく新茶は、それはそれは美味しくて、今までの苦労が全部吹き飛びます。汪先生の思いは『お茶をいただくことで、明るく前向きに生きていけること』。工芸茶の魅力をより多くの人に知っていただき、日常で楽しんでいただけるよう、これからも務めていきたいと思っています」。


CROESUS(クロイソス)
http://www.mercure.jp

銀座店
東京都中央区銀座7-10-10 セレンシービル1F
TEL 03-5568-2200
11:00~20:00 不定休
大阪店
大阪府大阪市天王寺区六万体町4-18 カセタニビル1F
TEL 06-6771-0088
10:00~19:00 不定休
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