社会ニュース/社会ニュースの最新トピックス一覧

共同体は幻想か 今度はポルトガル財政危機(2ページ目)

ギリシャやアイルランドに続いて、ポルトガルも財政危機が深刻化しています。次々と表面化するEU諸国の財政危機、EUという共同体の将来にも暗雲が立ち込めます。

執筆者:All About 編集部

1月12日の国債入札は無事終えたが……

そんな状況の中、1月12日にポルトガル国債の入札が行われました。入札、つまり国債を売るための販売は、ポルトガル国債がまだ信用して買ってもらえるかどうか、その点が問われる大事なイベントになります。

今回の入札では12億5000万ユーロ(約1370億円)の国債が、入札されることになっていました。その結果は……ポルトガル国債は問題なく全額落札され、ポルトガルは資金を調達することができました。ここでは果たして落札されるかどうか懸念されましたが、結果としてはうまくいったわけです。

まだまだ終わらない財政問題

しかし、これでポルトガルの財政問題が終わりになることは、決してありません。2010年も財政赤字の削減は進んでおらず、今後進めるにあたっても相当な困難が予想されます。

ポルトガル国債は今後も続々と償還(返済)日が予定されており、今年2011年4月には45億ユーロ(約4900億円)、6月には50億ユーロ(約5500億円)の償還が控えています。これらの償還日が近くなれば、再び懸念が高まることになりそうです。

ポルトガル国債の利回りは、ここ1~2年で上昇中。利回りとはちょっとわかりにくいですが、簡単に言えば「利回りが上昇する」とは、国債の価格そのものが低下することを意味しています。反対に利回りが下がっている場合は、国債価格は上がっています。

もう少しわかりやすくするために、ここで「売り出し価格1万円、毎年の利子が500円」の国債を考えてみます。つまり、この時点では利回りが5%です。国債というのは、最初に売りだした後も価格は変動します。これは一般投資家にはあまり縁のない、国債の金融市場で売買される価格の変動です。

■価格が1万円のままの場合
国債価格が1万円のままだった場合は、利回りは売り出し時と同じで、500/10,000=5%のままです。

■価格が1万1000円になった場合
国債価格が1万1000円まで値上がりした場合は、利回りは500/11,000=4.5%です。国債価格が上下しても利子の金額が変わらないなら、価格が上がると利回りは下がります。

■価格が9000円になった場合
国債価格が9000円まで値下がりした場合は、利回りは500/9,000=5.5%です。価格が下がれば、利回りは上昇します。

ポルトガル国債の信用度は近年下がっていて、国債価格が下落しているのが実情です。そのため利回りは上昇し、10年物国債の利回りが最近7%以上になりました。この7%という数字は、ギリシャやアイルランドが救済を受けることになった時に超えていた数字、つまり国債が「危険である」という事実を示す数字でもあります。

ポルトガルは「支援要請せず」と表明

ドイツなど他のEU諸国が最近、ポルトガルに対して、EUやIMFに支援要請をするよう求めたという報道がありました。しかし、ポルトガルが表明している立場としては、自分たちはEUやIMFに支援を要請するつもりはなく、あくまで自国の財政問題は自国で解決していくとしています。

実際に解決できればそれが一番ですが、絶対に可能であるという保証はありません。今後の展開次第では、ポルトガルもギリシャやアイルランドのように、EUやIMFからの支援を受けることになるかもしれません。

リーマンショック後に次々と表面化したEUの財政問題。ポルトガルやギリシャの他にも、スペインも財政の悪化が懸念されています。ユーロ圏は2010年代、相当な正念場となるでしょう。

  • 前のページへ
  • 1
  • 2
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

あわせて読みたい

あなたにオススメ

    表示について

    カテゴリー一覧

    All Aboutサービス・メディア

    All About公式SNS
    日々の生活や仕事を楽しむための情報を毎日お届けします。
    公式SNS一覧
    © All About, Inc. All rights reserved. 掲載の記事・写真・イラストなど、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます