悦楽への間口が広いカリフォルニア

未だかつてフェラーリは、同時代に2種類のパッケージを、V8モデルに用意したことなどなかった。12気筒ならMRとFRを用意した時代もあったのだ。けれども今なら、MRの458イタリアとFRのカリフォルニアという2種類の、まるで違うV8フェラーリを選ぶことができる。
フェラーリ458イタリア

2009年のフランクフルトショーでお披露目された、F430の後継となるV8ミッドシップモデル、458イタリア。車名の458は4.5リッター(排気量)と8気筒に由来する。全長4527×全幅1937×全高1213mm、車両重量は1580kg。日本での価格は2830万円となる

458イタリアは、1975年の308GTシリーズ以降、連綿と続くミッドシップV8フェラーリの系譜にある。ミッドV8フェラーリは2世代ごとにオールブランニューとされてきたから、458は前2世代(360と430)とはまるで違うモデルということになる(厳密には、それ以前ほど“まるで”違うとは言い切れないが)。
フェラーリカリフォルニア

2008年のパリサロンで発表されたリトラクタブルハードトップをもつ2+2FRモデルのカリフォルニア。全長4563×全幅1902×全高1308mm。価格は2360万円

一方のカリフォルニアは、リトラクタブルハードトップをもつ2+2のFRスポーツカーだ。パフォーマンスの上昇に合わせて価格も上昇したミッドシップV8に代わって、跳ね馬のエントリーモデルとして位置づけられている。

だから、両車の狙いの差は歴然としている。458にはもはや、シロウトにはとうてい楽しみ切れないほどのハイパフォーマンスが与えられており、数々の電子制御が備わっているとはいえ、油断して乗るわけにはいかない、スリリングなマシンである。だから、高性能なスーパーカーに乗り馴れた人が、十分な反射神経を持って性能を楽しむ部類のクルマだ。

カリフォルニアも、もちろん高性能である。踏み込めば、フェラーリらしいサウンドを響かせて優れたパフォーマンスを披露する。けれども、その悦楽に至る間口がMRの458に比べて圧倒的に広い。ほとんどAMGのSLに乗るような感覚で、フェラーリワールドに浸っていける。458も走らせること自体はイージーだし、誰でも動かせることには違いないが、広いと思わせておいて実は狭い足場のようなクルマなのだ。

カリフォルニアの使命は、これまでフェラーリに憧れていたけれども、経済的な事情以外で踏みとどまっていた人たちをコチラ側の世界に引き入れることだと思う。入門というよりもむしろ宗旨替えだろう。ミッドシップのフェラーリは、どうしても派手にみえるし、いかにもスーパーカー然としているし、実用性もそれほど高くない。もっと気軽に楽しめるフェラーリが欲しい、という人のためのカリフォルニアだろう。