どの疾患の薬にも、効果があるものには副作用が起こる可能性もあります。ただ、HIVの場合は治療を継続していくことが重要です。副作用の内容によって、薬剤を変更することもありますが、軽度の副作用の場合は、効果の方を重視して継続する場合もあります。

HIV薬の副作用

kusuri

薬が飲みにくかったり、何か飲めない理由があれば直ぐに医師に相談してくださいね

HIV薬全体の主な副作用には、胃腸障害(吐き気、下痢など)、頭痛、発疹、高脂血症、糖尿病、骨密度低下、出血傾向、精神神経系症状(うつ状態、集中力低下、眠気、不眠など)、肝機能障害、腎機能障害、心血管疾患(心筋梗塞など)があります。

最近、HIV治療で注目されているのは、代謝に関する副作用。上記で言うと、糖尿病、高脂血症、骨粗鬆症(骨密度低下)になり、PI(プロテアーゼ阻害薬)でみられることがあります。非常に効果も良く、安全性も高い薬なのですが、PIの作用は、HIVウイルスをおさえるだけでなく、代謝に関連するプロテアーゼも阻害してしまうことがあります。

HIV薬は、長期間服用しなければなりません。HIVのウイルス量が抑えられコントロールされるのですが、このように薬の副作用によって合併症を発症する場合もあります。

副作用なので薬剤を変えることもありますが、治療効果が上回る場合は、薬を変えずに合併症の治療をします。合併症の治療は、HIV薬の相互作用を見ながら選択していくので、必ず医師の判断に従ってください。

HIVの薬剤変更について

以下のような場合は薬の変更を検討します。

■ 副作用のリスクが効果を上回る時

吐き気など胃腸障害や眠気が酷いなど日常生活に影響を与えたり、薬が飲めない、ようでしたら変更になる可能性があります。

また、前述した代謝関連の副作用リスクの方が高いと判断された場合は、代謝系には影響を与えない薬に変更することがあります。インテグラーゼ阻害剤(ラクテグラビルカリウム(RAL)、商品名:アイセントレス、MSD社、2008年発売)が選択されているようです(2010年エイズ学会より)。

妊娠・出産をする時
胎児に比較的影響のない薬剤に変更します。詳しくは前回記事「HIVの基本的な治療法・注意点」をご覧下さい。

女性が感染者で子供を希望する場合は、人工授精・体外受精、男性が感染者の場合は精子からHIVを取り除いて人工授精を行います。出産後も、母子感染を防ぐために帝王切開し、粉ミルクで育てていくことができます。

■ 新薬が発売された時
配合剤の登場により薬剤の数が減ったり、新しい作用の薬がでたり、副作用が少ない薬が開発された場合も、薬を変更することがあります。

■ その他
薬の効果が見られない時、または、薬に対して耐性ができて十分な効果が出なくなってきたと考えられる時には、これまでと違う作用の薬に変更になることがあります。また、忙しい人には食事に関係なく服用できる薬など、飲み方に合わせて選択されます。

HIV治療の注意点

薬を飲み続けてHIVのウイスルが体内から消失するのは、理論上70年以上と言われています。非常に書きにくいことではあるのですが、HIVの薬は一生涯服用しなければなりません。糖尿病や高脂血症、高血圧、膠原病など、長期間服用しなければならない疾患は色々ありますが、1度でも飲み忘れると薬に対して耐性ができてしまうリスクが増えるので、服薬が大きなストレスになってしまう人もいるようです。

しかし、現在も薬や治療法の開発が続けられています。徐々に効き目が高まったり、飲みやすくなったり、副作用が弱くなったりと、改善していくでしょう。それまで、絶対に以下のことは守るようにしてください。

■ 定期的に通院する(診断、検査、薬の処方をしてもらう)
体調が良くなったからといって、通院を止めないでください。定期的に検査をしたり、現在の状態を診察してもらうようにしてください。

処方された薬は、決められた時間に決められた薬を服用する
選んで飲んだり、飲んだり飲まなかったりすると薬が効かなくなってしまい、効く薬がなくなってしまう恐れがあります。飲み忘れた場合は、気づいた時点で服用するのか、次回からにするのか医師・薬剤師の指示に従ってください。なお、2回分まとめて服用するのは絶対に止めてください。

HIVの治療費

治療には、薬やHIV/AIDSの症状の程度、合併症の有無によって異なりますが、自己負担だと月に10数万円から高くて30万円前後かかることがあります。保険の種類にもよりますが、例えば3割負担の場合は、1ヶ月に3万円から10万円程度の負担になります。

高額療養費制度という、一定基準額を超えて負担した医療費を還付してもらえる制度や貸付制度などもあります。収入によっても基準額が変わりますので、自治体の窓口か、病院のソーシャルワーカーなどに相談してください。

ここでは詳しく触れませんが、利用できる制度も色々あります。
(参考サイト) 関東甲信越HIV/AIDS情報ネット「制度の手引き」>新潟大学医歯学総合病院  感染管理部

最後に

HIVの治療に関して全般的に言えることですが、毎年のように薬剤の使われ方、治療指針が改定されているので、専門医の指示に従って正しく服用してください。

また、HIV薬の作用機序や薬の組み合わせ、体質によっても異なります。服用後、何かおかしいと感じた場合は、医師・薬剤師にご相談ください。

今回の記事では副作用について解説しましたが、HIVの治療は、最初はHIVのウイルス量を抑えAIDSで命を落とさないことと延命が目標でした。近年の薬剤開発、医師をはじめとした医療従事者の治療経験の蓄積により、それは達成されてきました。しかし、長く生きることによるHIVの副次的疾患、例えばHIVで免疫が低下することによるガンなど、また、前述のように薬剤治療による副作用(合併症)が課題になってきています。

専門の先生方が、色々な視点から治療とそのサポートをされています。身体的だけでなく精神的にも、私には想像がつかないぐらい大変なことでしょう。でも、先生方と向き合って、一緒にきちんと治療を続けていっていただければと思います。

⇒ HIVの症状・治療法については、「HIV感染症・エイズ」をご覧下さい。
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