ここではガイドラインを元に、HIVの治療法について解説します。しかし、新しい薬が出たり、治療法の定義が変わったりと、短期間で見直しがあることもあります。実際の治療と異なることもありますので、専門医の判断を優先してください。

HIVの治療について

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他の薬にもいえることですが、処方されたものを忘れずに飲み続けることが大切

HIV治療が始まった当初は、早期治療が推奨されていました。その後、薬が飲みにくかったり、飲み忘れたりして継続的に治療できず、耐性菌が出るなど悪化が懸念され、HIVと診断されてすぐではなく、AIDSの症状がみられてから治療を開始するという考えの時期がありました。ここ最近は、飲みやすい新しい薬が開発されたり、早期治療がHIVの進行やHIVが引き起こす合併症を改善することが分かり、また改めて早期治療が推奨されるようになっています。

2010年末現在、推奨されている治療開始時期は、以下となります。
※米国保健福祉省(DHHS)ガイドラインより

■ 未治療患者に対する抗HIV療法の開始基準

1. 以下の場合は、抗HIV療法開始を推奨
  • AIDS発症または、その既往歴あり
  • CD4陽性リンパ球数<350/立方ミリメートル
(健康成人は、700~1,300/立方ミリメートルで、200未満になると免疫不全状態であるAIDSになる)

2. 以下の場合は、CD4陽性リンパ球数の値に関わらず抗HIV療法を開始
  • 妊婦、HIV腎症、B型肝炎ウイルス感染患者(HBV重複感染患者)で肝炎治療を必要とする患者

なお、CD4陽性リンパ球数が350~500/立方ミリメートル以下の場合、500/立方ミリメートルより多い場合は、ガイドラインを作っている先生方の間で、積極的に治療を開始した方が良いかどうかの推奨度合いが異なっているようです。

また、HIVに感染して2~6週間ぐらいに一過性に体内のHIVのウイルス量が増えます。その時、50~90%の人が以下のような症状がみられることがあります(急性期)。その際に、症状を緩和したり、ウイルス量を減らすためなどに、治療を開始する場合もあります。しかし、薬の副作用や薬剤耐性などの問題から直ぐに治療を行わないこともありますので、専門医の判断を仰ぐようにしてください。

(参考:急性期の症状)
発熱、リンパ節腫瘍(首、足の付け根など)、咽頭炎、皮膚の湿疹、筋肉痛・関節痛、頭痛、下痢、吐き気など

HIVの薬剤治療(抗HIV療法)

HIVの治療には、前回紹介した薬を1種類だけではなく複数組み合わせて使います。理由は、より高い効果が得られることと、薬が効かなくなるウイルスの発現(耐性)を防ぐために行われます。この治療法をHAART( Highly Active Anti-Retroviral Therapy)(ハート療法)(多剤併用療法)といい、薬を混ぜ合わせるということからカクテル療法と呼ばれることもあります。

HAARTは、各人の症状や体質などを鑑みながらキードラッグとバックボーンから、1つずつ選択し組み合わせられます。
※薬剤の略語は、前回記事を参照してください。

<推奨>    キードラッグ      バックボーン
NNRTIベース    ETV           +ABC/3TC(エプジコム錠)
PIベース      ATV+TRV       +TDF/FTC(ツルバダ錠)
DRV+RTV
INSTIベース    RAL

<代替>
NNRTIベース  EFV           +AZT/3TC(コンビビル錠)
NPV        +ABC/3TC
PIベース     ATV+RTV       +TDF/FTC
FPV+RTV
LTV/RTV(カレトラ錠)
SQV+RTV

HAARTにより、長期にわたってHIVのウイルスの増殖が抑えられ、免疫を回復させて、AIDSを発症することなく長く生きることが可能となりました。しかし、それでも全てのHIVを体内から排除することは難しいようです。なぜなら、HIVのウイルスの一部が、長寿の白血球であるメモリーTリンパ球の中に潜伏するため、理論上HAARTを73.4年続けないと排除できず、ほぼ一生涯の治療を意味しています。

参考)妊婦に対する抗HIV薬の使い方
推奨度        NTRI         NNTRI            PI                その他
第一選択    AZT            NVP          LPV/RTV
                       3TC
第二選択       ddl                                IDV+RTV
                       FTC                                  NFV
                       d4T                                   RTV
                       ABC                             SQV+RTV
データ不十分  TDF                                 ATV                RAL
                       DRV                                MVC
                                                              FPV
推奨されない                    EFV
                                         DLV

※妊婦に対する治療開始の基本的な考え方は、HIV感染と分かった時期や治療の有無によっても異なります。医師の指示に従ってください。

母子感染(出産時のHIV感染)を防ぐため、日本ではATZを点滴しながら帝王切開の出産を推奨しています。また、母乳にウイスルが含まれているので授乳は禁止されています。出産した子供のHIV感染管理に関しては、医師の指示に従ってください。

HIV薬での治療目標

抗HIV療法による治療は、以下を目標として行われます。
1. 血中のウイルス量を長期にわたって検査での検出限界以下に抑え続けること
2. HIV関連疾患(感染症、関連がんなど)及び死亡を減らし生存期間を延長させること
3. QOL(Quality of Life:生活の質)を改善すること
4. 免疫機能を回復させ、持続すること
5. HIVの二次感染(性交渉などによる他者への感染)の可能性を減少させること

そのためには、きちんとHIVの薬を服用し続けることが肝要になります。1回でも飲み忘れると、薬が効かなくなりHIVが増殖し病状が悪化するだけでなく、効く薬がなくなってしまうことがあるからです。

以前は、1回に飲む薬の数が多い、錠剤が大きい、食事の前に飲む薬と後に飲む薬など飲み方が煩雑、吐き気などの副作用、さらに昼の分などを持ち歩くことでHIVの薬だと他人に知られることを懸念し、薬を飲み続けていくのが難しい状況でした。

しかし、最近では、1日1回の薬や、2成分が1錠になった配合剤、食事の影響を受けない薬も登場し、比較的飲みやすくなっています。

専門医から指示があると思いますが、薬をきちんと服用し1~2ヶ月に1回程度、ウイルス量やCD4陽性リンパ球数の値を測り、AIDSの発症などが抑制されているかどうか確認していってください。

薬の副作用については、「HIV薬の副作用と注意点」に詳しくまとめましたので、併せてご覧下さい。
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