肝臓・すい臓・胆のうの病気/胆石症・胆のう炎

胆石症の治療法・予防法

胆石による症状が出た場合や、無症状だけれど胆石症と診断された場合、どんな治療をしていくのでしょうか? 症状が出ないようにするための予防法、再発防止法は? 胆石法の治療法・予防法を解説します。

染谷 貴志

執筆者:染谷 貴志

医師 / 消化器・肝臓の病気ガイド

胆石症の治療

食事療法

胆石の予防のためには、野菜、フルーツの摂取が効果あります。

胆石症の治療は、できた胆石を除去すること。その方法には、開腹手術で摘出する他に、胆石を溶かす溶解剤を服用する方法、体外から衝撃波をあてて胆石を細かく砕く方法、内視鏡を使って胆石を除去する腹腔鏡下胆のう摘出手術などがあります。

まず、症状がなく、健康診断などで見つかった胆石も治療が必要かということですが、これは基本的に手術を受ける必要はありません。その理由としては、症状のない人を治療しないで様子を見ていても、痛みなどの症状を発症する人は、年間2~4%ととても少ないからです。

しかし、小さい胆石をたくさん持っている人、胆のうの機能が失われている人、若年者などでは将来的に痛みを起こしやすいといわれています。また痛みがなくても、胆のうの壁が厚い場合は、慢性の炎症と胆のうがんの区別が難しいこともあり、放置すると危険なことがあります。

よって、胆石が見つかったときには、痛みがなくとも専門医と相談することが重要です。ここでは、それぞれの治療の特徴を述べます。

経口胆石溶解剤

読んだとおり、口から飲んだ薬で胆石を溶かしてしまおうという治療方法。ただし、溶解剤を飲めばすべての胆石が立ち所に溶けて消えてしまうわけではなく、溶解剤が使えるケースというのは限られていて、患者さん全体のほんの数%程度です。

胆石には大きく分けてコレステロール胆石と色素胆石があります。薬で溶ける胆石とはコレステロール胆石です。それも直径15mm未満、出来れば10mm未満という小さいもののうち、石灰化がなく、胆のう機能が保たれていることが条件になります。溶解に使う薬は利胆薬(りたんやく)というもので、コレステロールと水をなじませる作用のある胆汁酸が含まれています。この薬で結石の表面をゆっくり溶かしていきます。この薬は新たな結石を防ぐ作用もあります。

溶解療法は長期にわたって行う治療で、少なくとも半年、長いものでは2年近くかかる場合もあります。それでも完全に胆石が消失する確率は10~30%程度で、再発の恐れもあります。そうは言っても、やはり手術をするのはいやだけど、胆石の発作が出るのも怖いという方は、この溶解療法を希望されることも多いです。実際、薬を飲んでいることで、日頃の食生活も気にするようになったという副次的な効果もあったりするので、しばしば臨床の現場では選択される治療になります。

体外式衝撃波破砕療法(ESWL)

この方法も、体にメスをいれることなく治療できる方法です。体外から胆石に向かって衝撃波を当て、胆石を破砕する方法ですが、これもすべての胆石に適応があるわけではありません。直 径30mm以下、3個以内、石灰化のないコレステロール系結石で胆のうの収縮が良好であるなどの条件があります。

また、破壊された胆石が胆管を通過する際にトラブルが起きたり、石が残ってしまうこともあるなど、なかなか根治治療にならないという欠点もあります。再発の問題もあり、装置が非常に高価なため、第一選択の治療にはなりません。ただ、開腹手術と違い、体に傷が残らず安全性が高い、入院期間が短く日常生活にすぐ復帰できる、などの利点もあります。

胆のう摘出

胆石症と診断され、手術となったら胆のうを全部取り除く手術になります。これにはスコープを使う腹腔鏡下手術と開腹手術とに分かれます。どちらの方法になるのかは胆石の大きさにもよります。なぜ胆のう全体を摘出するかというと、胆のうを残すことによって再度胆石ができる可能性が高いからです。1年後には約1割、5年後には半数の人で再発するという報告があるほどです。胆のう摘出術は手術後も少し下痢気味になるのをのぞけば、以前と変わらない生活が送ることができます。徐々に肝臓も適応してきて、濃い胆汁を分泌するようになりますので、下痢も日を追うごとに改善されていきます。

腹腔鏡下胆のう摘出術

胆のう摘出術で、現在最も一般的なのがこの方法です。従来の開腹手術と同じことを、開腹しないで内視鏡を使って行う方法で、具体的にはお腹に5mmから20mmぐらいの穴を4ヶ所開けて、細い管を指し込みます。そのうちのひとつに内視鏡を挿入して腹腔内の様子をモニターで見ながら、残り3本の管で胆のう摘出のための手術をします。体への負担も少なく、術後の回復の早い手術法となります。この方法の利点としては、傷が小さい、術後の痛みが軽い、早期退院ができるということです。ただし状況によっては途中で開腹術に切り替える可能性があるということは、常に念頭に入れておきましょう。また胆のうの炎症がひどい時やがんの可能性が高い場合は行えない手術です。

開腹手術

結石が大きい場合、胆のうの炎症や周りの臓器への癒着がひどい場合には、腹腔鏡を使わずに開腹手術となります。切開する傷は15~20cm前後で、腹腔鏡に比べると回復は遅くなります。以前はこの方法が主流でしたが、現在では先に腹腔鏡を用いて、癒着がひどい場合などに、途中から開腹手術に切り替える方法をとっています。

胆石症の予防法

胆石症の予防の基本は食事です。

■ 肉類や脂肪分・コレステロールの多い食べ物を控える
脂肪とコレステロールは胆石症にはよくありません。脂肪を分解して消化させるのに、胆のうからは胆汁が多量に分泌されます。このときの胆のうの収縮によって疝痛発作は起こります。これを防ぐには、脂肪が多く含まれている食事をしないこと、食べ過ぎでの脂肪の過剰な摂取を抑えることです。 魚介類などに多く含まれているタウリンは、コレステロールでできた胆石を大きくならないようにしてくれます。コレステロールの多い肉を控えて、魚介類を食べるようにしましょう。

■ 栄養(炭水化物・タンパク質、脂質)のバランス良く摂る

脂肪分を控えましょうと言っても、適度の脂質は胆汁の排出や栄養のために必要です。炭水化物を過剰に摂取すると肥満の元になります。タンパク質の少ない食事はビリルビンで作られた胆石の成長を助長すると言われているので、しっかり摂取するようにしましょう。

■ ビタミン類(特にCとE)を多く摂る
ビタミンCとEは、胆汁酸の排泄を増加する働きがあります。胆石ができるのを予防する作用もあるため、ビタミンCとEの入った野菜類や果物などを取るように心がけましょう。

■ 規則正しい食事を心がける、朝食をきちんと摂る

食事時間が不規則になると、胆のうから胆汁が出されるのも不規則になり、胆汁がたまって疝痛発作が起こりやすくなります。

■食物繊維をたくさん摂る
食物繊維は、コレステロール値を抑えるのに有効であり、摂取した糖質や脂肪の吸収を遅らせる働きもあります。食物繊維には便秘の予防の効果もあるので、充分に摂取してください。食物繊維は海藻類や緑黄色野菜、きのこ類、いも類に含まれています。便秘になり、腸の内圧があがることが、疝痛発作の原因となることもあります。

■十分に休養をとり、疲れを残さない

■定期的に運動をして肥満を防ぐ
肥満になるとコレステロール代謝が悪くなり、胆石ができやすくなります。

つまり、普段から、食事に気をつけることが、生活習慣病だけでなく、胆石症の発症予防にもつながると考えていただければ、いいのではないでしょうか。

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