胆汁の成分からできる胆石とは
鋭くさしこむような痛みを伴う胆石症。一方で無症状のままの長期間、胆石があるケースも
コレステロールやビリルビンなどが主要な成分で、肝臓で作られる胆汁酸とともに胆汁になります。この胆汁は一度胆のうに蓄えられた後、胆管を通って十二指腸に流れます。胆汁中の成分が析出することにより、石となります。
多くは胆のうで石となるため、それを胆石(胆のう内結石)と呼びます。まれに胆管(肝内胆管、総胆管)に石ができることもあり、それらは肝内胆管結石、総胆管結石と呼ばれます。胆石は胆のうにできるものが最も多いので、主にこの「胆のう結石症」について解説をしていきます。
胆石症とは・胆石症の原因
胆石は、「コレステロール胆石」と「色素胆石」の大きく2種類に分けられます。コレステロール胆石とは、その名の通り、コレステロールを主成分とした胆石で、胆のうに多くできます。現在、日本人の胆石患者の大半が、このコレステロール胆石だと言われています。肝臓は胆汁酸とコレステロールを原料にして胆汁を作るのですが、コレステロールが増えすぎると、他の成分とのバランスが崩れて飽和状態になってしまいます。そして、溶けきれないコレステロールが結晶化して核になり、どんどん大きくなって胆石になるのです。
コレステロール量が増加する原因としては、コレステロール値の高い食品の摂取量が多いことや、肝臓でのコレステロール生成量が増加することが考えられます。どんな人が胆石になりやすいかという事ですが、欧米では4Fといってfemale(女性)、forty(40歳代)、fat(肥った)、fecund(多産の)といわれるぐらい女性に多い病気です。
色素胆石にはビリルビンカルシウム石と黒色石があります。ビリルビンカルシウム石は、大腸菌などの細菌感染が原因であることがわかっています。もうひとつのビリルビンが主成分である黒色石は、胃の切除手術後や肝硬変、心臓の弁の手術後にできる場合が多いのですが、これの原因はまだ明らかにされていません。
胆石症の症状……キリキリと差し込むような激しい痛みも
胆のう内にとどまっている限り、胆石は長時間何の症状もありません。この状態の胆石を、「無症状胆石」と言います。胆石持ちの人のほとんどが無症状胆石で、人間ドックなどで発見されることが多く、胆石の症状が現れる人は胆石持ちの1~3%とも言われています。実際、健診の超音波検査でひっかかりましたと言ってうちのクリニックに来院される患者さんは多くいらっしゃいますが、大部分の方はその後も症状が出ないまま定期的に超音波検査でフォローしているだけという状況にあります。
無症状の場合は、長い間胆石に気付かず、高齢になると無症状胆石持ちの2~3%が胆のうがんや胆管がんになると言われています。症状を伴う胆石は「胆石症」と言われ、大部分が胆のうから胆のう管、胆管に移動した胆石によって起こります。 胆石が小さければ、何の障害も起こすことなく小腸に排出されるか、胆管内にとどまっています。しかし、胆のうから胆管内へと移動するどこか途中で、胆石が胆管を塞いでしまうようになると問題となります。
吐き気や嘔吐を起こしたり、みぞおちや右脇腹に周期的に激しい痛み(胆石仙痛)が生じたり、背中の痛みや張り、腰痛や肩こり、大量の汗が出るなどの症状を起こします。胆石疝痛は、鋭くさしこむようなきりきりとした痛みで、突然起こります。食後1~2時間後に起こることが多く、通常は30分から数時間痛みが続き、やがて消えていきます。ただし、この強い痛みはすべての胆石症の人にあらわれるわけではなく、なんとなく鈍い痛みを感じる程度の人もいます。これらの症状は、食べ過ぎた後、過労の時に起こりやすいです。また、1回症状が出た方は、やはりその後再び症状を繰り返していることが多いですね。結局、ひどい合併症は起こさなくても、時々、のたうちまわるような痛みが出るため、患者さんの方から、「先生、手術で取ってください」といってくることもあります。
また、胆石により胆管が閉塞してそこに細菌が感染すると、炎症を起こして高熱が出ることもあります。肝臓から流れてくる胆汁が胆石によって堰き止められてしまうので、目や皮膚に黄疸が見られることもあります。上腹部の痛み、発熱、黄疸がそろったときには、急性胆管炎を併発していることが疑われます。急性胆管炎を起こすと、細菌が体中に回る敗血症という状態となり、血圧が下がってショック状態となり、もうろうとしたり、意味不明なことをしゃべったりする意識障害などの症状も出てくることがあります。このときは生命にかかわる危険な状態ですので、緊急に治療をする必要があります。
胆石は全く症状が出ない人もいますが、このように重篤な状態になる可能性もありますので、心配なときは、近くの内科を受診するようにしましょう。
胆石症の診断法……最初はほとんどが超音波検査
胆石は通常、痛みなどの何らかのお腹の症状で病院や診療所を受診して、診断されることになります。もしくは、人間ドックなどで、お腹の超音波検査が検査項目に含まれている場合には、症状がなくても発見されることがあります。いずれの場合でも、現在は超音波検査が最初の診断法であることがほとんどです。胆石症の検査法…血液検査・超音波検査・CT・MRCP・ERCP
診断には以下の検査があります。■血液検査
無症状の胆のう結石の場合、血液検査にて異常値を示すことはほとんどありませんが、胆管結石の場合は肝・胆道系酵素(AST、ALT、ALP、γ-GTP)やビリルビン値が上昇傾向を示します。また、胆のう結石においても胆のう炎等の感染を伴う場合も上昇傾向を示します。
■腹部超音波検査
最も簡便かつ確実な検査方法。 超音波をおなかの外から当てて、胆石があるかどうか調べる検査法です。外来で簡単にできる検査で、痛みもないので負担がありません。小さい結石を見つけることも可能です。胆石症のうちの胆のう結石であればほぼ100%エコーで見つけることが できます。総胆管結石でも70~80%の確率で発見できます。大きさや形、数はもちろんですが、どのような種類の成分でできている胆石症なのかわかるので 今後の治療のためにもかかせない検査法です。胆石だけでなく、炎症をおこしているか、またがんのおそれがあるかもわかります。
■CT(コンピュータ断層撮影)
超音波検査よりもさらに詳しい結石の状態の把握ができます。胆のうに多くの結石ができている場合、それに隠れてがん細胞がある場合がありますが、CT検査をすればがんとの区別もはっきりとわかります。
■MRCP
磁気共鳴胆管膵管撮影法で、造影剤を使わずに胆道の撮影ができます。超音波検査同様、負担がほとんどない検査で、検査台に横になっているだけで撮影が終わり胆石の有無が判定できる画像を作ることができます。造影剤を使う必要もありません。
■ ERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)
内視鏡を十二指腸乳頭まで差し入れて、造影剤をそこから胆管と胆のうに送り込み、エックス線撮影をする検査です。胆のう内部の細かい観察もできる し、胆管にできた小さな胆石も確認するのに有効です。胆石の確認とともに、引き続きその胆石を取り出してしまうという治療を行える点が大きな特徴ですが、体に多少負担があるため基本的には入院して行われる検査です。