「穴だらけの家」の暖房はどうする??
『SH邸』では、例えばキッチンに立っていると、L型につながったリビングルームの気配が感じられ、6.5mの高さの吹抜けを通じて3階の子供室が見えます。リビングルームにも小さな吹抜けがあって、2階のホールとつながっています。2階の南側に設けられたサンルームは、食堂・キッチンの吹抜けに「浮いている」ような作りで、下の階を見下ろすことができます。このような「穴だらけの家」は、お互いの空気が全てつながっているので、従来のようにエアコンやファンヒーターを使った「部屋ごとの冷暖房」という考え方はふさわしくありません。なぜなら、1階の居間・食堂・キッチンで吹いた温風は2階、3階へと上がっていってしまい、なかなか肝心の1階が暖まらないからです。それでは、どうしたら良いのでしょうか?
このような場合に効果的なのは、暖房に対する従来の考え方を少し変えること。具体的には、「暖房機器で熱をつくって暖かく感じさせる」のではなく、家の中全体を「寒く感じないようにする」ことです。
例えば、もし真冬の時期に、冷気を感じない5月や10月頃の「暑くも寒くもない季節」を家の中に作ることができれば、あまり暖房を使わなくても大丈夫だと思いませんか? そのためには、足下に冷たい空気が流れたり、窓に面した体が冷えを感じたりしないようにすることが大切です。これは何を意味するのでしょうか?
つまり、「どのような暖房器具を選ぶか」という以前に、まず必要なのは、「家の中で温度のムラがなくなるように、建物自体の作りをしっかりする」ということなのです。具体的には、壁や屋根の断熱を万全にすることと、断熱の弱点になる「窓」に、性能の良い断熱ガラスを使うことが重要となります。
Low-Eペアガラス(資料提供:旭硝子)
こうして、建物側の備えができました。次回はいよいよ、暖房設備器具の選定に移ります。
室内が一体になったオール電化住宅『SH邸』で、私たちが選択した暖房方式は? 次回の後編をお楽しみに!