車窓から、大自然を眺める
八戸を出た列車は新規開業区間に乗り入れる。線路も架線柱もコンクリート壁も何もかもが真新しく走っていて気持ちよい。トンネルをいくつも抜けるうちに、次第に在来線とは離れていく。在来線は、新幹線新青森開業を機に、青い森鉄道として営業される。在来線と離れた手付かずの山野を駆け抜けるのは見ていて新鮮だ。なだらかな山並を遠くに望みながら猛スピードで飛ばしていくが、そんな速さを感じさせないほど揺れはほとんどなく快適そのものだ。
中間駅、七戸十和田駅が誕生
乗車したのは、途中駅を通過する新幹線だったので、「七戸十和田駅」は通過。高速で駆け抜けるので駅名標は全く読みとれないほど。駅名に十和田とあるが、十和田湖畔にあるわけではなく、あくまで十和田湖への玄関口という意味合いだ。在来の鉄道とは全く連絡しない新幹線単独駅だが、この付近にはかつて南部縦貫鉄道が走っていた。ユニークな車体であるレールバスで有名な鉄道で、新幹線とのアクセスをもくろんだこともあったが、新幹線開業まで持ちこたえることができず、1997年に運行を休止してしまった。新幹線がもっと早くできていたら、どうなっていたのだろうか。
陸上トンネルでは最長の八甲田トンネル
七戸十和田を過ぎると、左手にひときわ高い八甲田山が見えるのがうれしい。その威容を確認すると、今度はトンネルに入る。長さ26.5km、海底トンネル以外の陸上トンネルとしては日本最長の八甲田トンネルだ。貫通した時点では、世界最長の陸上トンネルだったが、2カ月後にスイス・アルプスのレッチュベルク基底トンネル(34.6km)が完成し、タイトルを奪われた。但し、スイスのトンネルは単線のため、複線断面の陸上トンネルとしては、世界最長である。
ねぶたなど、青森のイメージを盛り込んだ新青森駅
八甲田トンネルを抜け、さらに短いトンネルをいくつかくぐると、列車は減速していく。右手に縄文時代の遺構である三内丸山遺跡の特異な復元建造物が見えると、まもなく列車は、真新しい新青森駅の構内に滑り込んでいく。新青森駅は高架駅で、2面のプラットホームに4本の線路がある新幹線駅としては標準的なタイプだ。エスカレータで降りたコンコースが2階部分で、見晴らしのよい大きな待合室がある。
発車までのひとときや、到着後、乗り換えまでの時間に余裕があるときにくつろぐには最適の場所であろう。
コンコース1階の玄関脇には、壁画大版画があるが、これは青森県出身の版画家(本人は板画家と称す)・棟方志功生誕100年を記念して青森市民が作成した「青い森から放つ」という作品である。
構内のいたるところに木製のベンチが置かれているが、青森県産のヒバ材を用いた椅子で、温かみのあるくつろぎの場所となっている。
駅舎は、ガラス張りのモダンな建物を中心に、両サイドは木をイメージした外壁で覆われている。これは近くの三内丸山遺跡を思わせる縄文時代の集落の佇まいを表したもので、中央ガラス張りの「青森の未来」を象徴したつくりとともに、「縄文」と「未来」の融合を表現している。
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