タイ料理にクラシック?!
場所は、駅からぼちぼち歩くと、飲食店がぐっと減るあたり。ちょいと不安になるような、緑あふれる住宅地の一角に佇む。階段を上ると、そこには上質な空間が待ち受けていた。
中に入ると、テーブル間を贅沢なまでにとった、ゆったり空間。天然素材のやわらかな質感が伝わってくるテーブルとイス。タイを想わせる調度品がさりげなく飾られ、店内は穏やかな時間が流れていた。そこは、まさに上質な空間というべき。そして、耳を澄ますと、クラシックが。
日本人が思い描くタイ料理のイメージからすれば、タイ料理にクラシック?!と、一瞬違和感を覚えるだろうが、この店でサービスをうけ、良質の陶器に触れながら料理を口にし、その場に身をおけばおくほど、ワタシはその音楽を所望するようになった。妙に心地がよいのだ。ただ、以前の南大井店のときのようなパワフルなタイ料理を食べるぞ!と気合をいれて店を訪れたかたにとっては、出鼻をくじかれた気分になるかもしれない。いっぽう、先入観なく、じんわりと醸し出される時間を素直に受け止められるかたにとっては、えもいわれぬ快適な時間を過ごすことができるだろう。
シェフ兼ベテランお母さんは味を変えるのがおてのもの
身がふっくらしたエビがふんだんにはいった「エビと春雨の蒸し物(クンオップウンセン)」
味は、辛さが控えめで塩味が比較的しっかり。ただ、甘さが控えめなので、口中も胃も食後はスッとした感じを受ける。実は、この味はあくまでもベース。というのも、この店では好みに合わせて“気軽”に味が変えられるようになっているのだ。本場タイのようにね。たとえば、甘さは控えめに、もっと辛く、油は少なめに、とか、エビを鶏肉にかえて、といった味以外の要望にも応えてくれるのだ。
タイバジルの香り高さが嬉しい「鶏肉のバジル炒めごはん」。ランチではごはんが日本米になる。
ワタシはこれからここで食べる場合は、料理によって多少変わるけれども、基本的に辛さと甘さをほんの少しプラスしてもらおう。好みを伝えるのはタイではあたりまえのことだが、日本ではなかなか言えるお店は少ないのが現実。ここでは皆さんもぜひとも思い思いの味を正直に伝えていただきたい。タイはそれができる文化なのだから、気にしなくても大丈夫ですよ。