不妊症の原因はさまざま
池上:
女性不妊の原因は、排卵障害(ホルモンの異常により、卵子を排卵しない状態)、キャッチアップ障害(卵子を卵管に取り込む卵管采が機能しない状態)、卵管因子(卵管が何かの原因で詰まって、卵子が通れない状態)、着床・内膜因子(子宮内膜の異常や内膜を維持するためのホルモンを分泌する黄体の機能に異常がある状態)、子宮頸管因子(精子の通り道である子宮頚管の機能に異常がある状態)、子宮因子(子宮の形に奇形がある状態)、セックスレス免疫因子(精子を異物と認識して免疫で攻撃する状態)など、さまざまです。
男性不妊の原因は、精子の問題(無精子症・乏精子症)、精巣の問題(精索静脈瘤)、セックスレスの問題(EDや射精障害)などがあります。
不妊治療のステップ
「不妊治療という医療のサポートによってうまれるいのちもある」
池上:
体外受精の件数は2万症例近くあり、そうなると、約50人に1人が体外受精で生まれていることになります。体外受精の生みの親であるロバート・エドワーズ博士が今年ノーベル賞を取りましたが、この技術によって、100万人くらいの人が生まれているんです。
不妊治療のステップとして、一番最初に行われるのがタイミング療法というもので、これが一番妊娠しやすいです。その次に、タイミング療法を続けながら、注射を使った治療になります。それも妊娠しやすいです。その次は人工授精で、男性の精子から、元気な精子を遠心分離で取り出して、女性の体に戻します。
その次のステップが体外受精です。体外受精のなかに顕微授精というのがあり、精子があまり元気がないような場合、卵に精子を受精させて戻します。体外受精などを高度不妊治療といいますが、不妊治療をしている人の20%くらいが高度治療を受けていると仮定すると、不妊治療をしている人は10万人くらいいるのではないかと思われます。
河合:
この間調査をしてわかったのですが、高齢出産層だと4人に1人くらいの割合で、不妊治療を受けているようですね。最近の高齢出産の人たちは情報を入手することが上手で、妊娠可能な時間が限られていることをよく理解しています。そうなると、自然に妊娠するのを待っているだけでは気が気でないという気持ちになりますね。特に晩婚の方で子どももが欲しい方はすぐ行動します。新しい妊娠の常識ができつつありますね。
不妊治療への敷居は低くなっている
大葉:
以前より、早い時期から不妊治療に入る人が増えている気がします。敷居が低くなっているんでしょうね。前は避妊を止めてから2年経ってから、治療に踏み切る人が多かったのですが、最近では、半年避妊を外しても兆候がないからと、妊娠を先送りしたくないといって受診して、治療を始める人もいます。
池上:
婦人科検診は1年に1回は絶対に受けてほしいと思います。子宮筋腫や内膜症が検査で見つかることがありますから。また、子宮頸がんの前段階の「異形成」という状態も多いです。病気は早く見つかれば早く見つかるほど、早く対処もできるのですが、がんの前期になってしまうと取らないといけなくなってしまいます。