赤ちゃん・育児特集/子育てライフスタイル

子育てという新しい人生(2ページ目)

映画『うまれる』では、虐待経験を持つ女性が妊娠し、母になるプロセスが描かれています。自分はちゃんといい親になれるのだろうか?という不安は、多くの妊婦さんにも、育児中の方にも共通する思いではないでしょうか。一方、両親との不和から、自分が父親になるという実感を持てないパートナー。二人は戸惑いながら、少しずつ親になっていくのです。

執筆者:All About 編集部

1人目から2人目を産む時のハードルが一番高かった

猪熊:
私も大葉さんと同じで、夏のオリンピックのたびに3回産んだら、最後が双子で4人の母になってしまったんです(笑)。今思えば、1人目から2人目を産む時のハードルが一番高かったかも。子どもが2人に増えて、やることが2倍になったらどうしよう、って悩みましたね。でも、実際には2倍にはならず、1.2倍くらいで済んじゃった。2人で遊んでくれるし、意外と楽。それで3人なら何とかなるだろう……とタカをくくっていたら、3番目が予想外の双子だったんですね。神様は楽をさせてくれないなぁ~と思いつつ、運命だと受け入れる覚悟で育ててきました。

楽しいのは食事の時間、特に夕食です。毎晩、子どもたちとご飯を食べながら、いろんなことを話すんです。4人がその日の出来事を「ママ、聞いて!」と一度に話し出すこともあって、私はまるで「聖徳太子」状態。4人が一緒に話しても聞き取れる能力が付きましたよ(笑)。

お誕生日のお祝いも大切にしています。わが家では、お誕生日を迎えた子がお祝いの日のメニューをリクエストできることになっているんです。次女はロールキャベツ、双子はオニオンパイが定番。子どものためにせっせとお料理を作っている瞬間が、私にとっては一番楽しくて、リラックスできる時間ですね。
 

親になる不安、どうやって乗り越えればいい?

大葉ナナコさん

「育児は育自ですね」大葉ナナコさん

大葉:
誰もが、大なり小なり、親との問題を持っていたり、トラウマのひとつやふたつあるもの。親だって未熟なうちに育児を始めますし、キレたり、怒ったり、泣いたりして、育てながら、自分も育てられる面がありますよね。誰もにとって育児を始めるのは人生前半だし、親になってからの人生のほうが長いんですよね。

子どもが生まれて初めて、他者中心で生きる日々。「どこまでがしつけで、どこからが虐待」か、線引きはなかなか難しいですよね。「虐待は連鎖する」という言葉を聞くと、育児が怖くて仕方がなくなると思うんですね。

猪熊:
自分が何か子どもにしてしまうのではないか?と不安を抱えながら育児をするのは辛い。誰かにその心の言葉を届けてください。受け止めてくれる人は必ずいます。そして、自分が辛い育ちだったから、自分の子どもにも同じことをしてしまうかも、という不安は持たなくていい。親になった今から「生き直し」すればいいんです。

精神科医の名越康文先生と一緒に『なんで子どもを殺すの』(講談社)という本を出しています。虐待するかもしれないと思い込んで不安になっている母親と名越先生のやりとりを再現し、なぜ、母親は育児が苦しくなるのかを追求した本です。もし、自分が虐待するかも……?という不安を持っているママには、ぜひ読んでいただきたいです。

普通のママでも、ときには子どもを必要以上に怒ってしまったり、もしかすると手が出てしまうようなこともあるかもしれません。もちろんそれはいけないことではありますが、普段から愛情を持って接していれば、それは虐待とは言えないと思うんです。虐待としつけの一線を越えるには、相当の病的な変化があるんですね。一線を越えないためには、まず母親がしっかり自分の心を見つめる必要があるんです。母親が子どもを憎む時、その心の中にどのような変化が起きているのかを知ることで、極めて理知的に、頭で虐待を防ぐことはできるんですよ。
 

知識を事前に知っておくことは大切

大葉:
産後うつや、育児ノイローゼ、虐待といった報道が日に日に増えていますね。自分もそうなってしまうのではないかと不安を強めている読者の方もいらっしゃるように思います。

産後女性の体験談の中で、「産後うつ」という疾病と「うつな気分」が混同されて語られているなと思うことがあります。ちょっと憂鬱で見通しが立たない時期があった”ことを「産後うつだった」と表現する場合が少なくありません。猪熊さんは、どう思われますか?

猪熊弘子さん

「知っていることで対処できることがある」猪熊弘子さん

猪熊:
確かに産後の一時期、あるいは妊娠中にすっごくブルーな気持ちになることってよくあると思うんですよ。私も3回の妊娠中、感情の起伏は激しかったと思うし、クヨクヨしたり、イライラしたり、今考えると、なんであんなに不安定だったのかしら?と思うことも。でも、それは誰にでもあるマタニティーブルーズの症状だと知っていれば、「ああ、仕方ないわ。ホルモンのせいだから」って、とりあえず「ホルモンのせい」にできる。そういう意味で事前の知識は必要だと思うんです。

ただ、今は情報が発達しすぎていること、そして、特にメンタルケアについての研究がどんどん進んでいることから、ちょっとしたブルーな状態も「うつ」と勝手に思い込んでしまう場合もあるかもしれません。「産後うつ」だと決め込んで育児を放棄してしまったり、「産後うつ」の誤った情報を他のママに広めるなど、あまり良い連鎖があるとは思えません。

私は、本物の「産後うつ」のママに取材したことがありますが、ただのブルーな状態ではありませんでした。もし、本当に「産後うつ」ではないかと心配になったら、きちんと精神科の診療を受ける必要があると思いますね。

>> 妊娠・出産が、自分が生きてきたことを見つめなおす機会に

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