覚せい剤が人格を変える? 統合失調症のリスク
統合失調症の原因は詳しくわかっていませんが、脳内で、通常とは異なる神経活動、化学物質の作用が起きていることは確かです。覚せい剤の濫用後に幻聴が聞こえ始め、統合失調症と似た状態になり、最終的に統合失調症を発症した例も報告されています。
覚せい剤は精神に影響を与えますが、記憶がなくなったり、自分が別人格になったような異常な気分は、服用時の一時的なものではありません。精神そのものを不安定な状態にしてしまう統合失調症を発症した場合は、薬物依存の治療と平行して、精神科でも長い治療が必要になります。
日本の薬物に対する法律と過去の戦争
戦争に利用され、戦後の混乱期に広まってしまった覚せい剤。現代社会にも暗い影を落としています
覚せい剤はもともと医薬品として開発され、一部の呼吸器系疾患の治療に使われていましたが、その後で甚大な副作用が見つかったため、患者には投与しなくなりました。
しかし、一時的に眠気がなくなり元気になる感じがする薬理効果は、軍国主義時代に重宝されました。健康な人間を強制的に長時間休ませずに働かせる軍需工場を始め、睡魔が命取りとなる夜間の偵察飛行などにも利用されました。第二次大戦後の混乱期に軍事物資の横流しにより日本社会に広がった歴史の暗黒面が、今の社会にまで暗い影を落としてしまったとも言えます。
「痩せて元気になる」という薬には警戒を
現代社会において、ごく普通の生活をしていれば覚せい剤を薦められるシーンはそうないはずです。しかし、気晴らしだけでなく、ダイエットや疲労回復に大きな効果があるといった謳い文句で、一般市民に覚せい剤が広まっているのも事実。医学的に、短期間に副作用もなく痩せる薬はありません。まして、眠らなくても平気なほど気力がキープできる薬などありません。「痩せる」「元気になる」という誘い文句で薬物を薦められた場合、それこそが覚せい剤の可能性もあるのです。一度の失敗で、長い人生を薬物依存症治療に費やすことにならないよう、一人ひとりが警戒し、薬物に近寄らないよう注意することが大切です。
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