もう一人の天才的デザイナー、ヤコブセン
ルイスポールセンの照明器具を作ってきた、数々のデザイナーたちの中には、もう一人伝説的なデザイナーがいます。それは、
「アントチェア」などの家具デザインでも有名な、アルネ・ヤコブセンです。
タルジェッティ・ポールセン・ジャパンのセールスマーケティング部長・荒谷真司さん
「照明器具を論理的にデザインしたヘニングセンに対して、ヤコブセンは、もう少し直感的にデザインしていたようです。さらに、ヤコブセンには天才的な一面もありました。」
と話してくれたのは、タルジェッティ・ポールセン・ジャパンのセールスマーケティング部長を務める荒谷真司さんです。
「例えば、このダウンライトは、ある小学校のためにデザインされたものです。この建物は天井裏の空間に10cm位の深さしかなく、当時の照明器具では、器具を天井内に完全に埋め込むのは不可能でした。そこでヤコブセンは、照明器具を天井から少し出っ張らせてリングが浮いたようにデザインし、その『出っ張り』部分の隙間から周囲に光が漏れて、天井面に光が跳ね返るようにしたのです。」
「下だけでなく、天井も照らす」という前例のないダウンライト「ムンケゴー」
普通のダウンライトは、その名の通り、ただ下に向かって光を落とすだけですが、「下だけでなく、天井も照らす」という前例のないダウンライト「ムンケゴー」は、こうして誕生しました。この照明器具も、1955年の誕生以来、現在に至るまで世界中の建築家や照明デザイナーを魅了し続けています。ルイスポールセンからは、この「ムンケゴー」の精神を受け継ぐ「天井も照らすダウンライト(シーリングランプ)」が、この後も続々と誕生しました。
実用的で、一度見たら忘れられないデザイン。
ヤコブセンの「AJランプ」
どんな空間にも溶け込む不思議な個性「AJランプ」
画像提供:ルイスポールセン
傾いた足とラッパのような形で、可愛らしさとインパクトを併せもつ
ヤコブセンがデザインした照明器具はいくつもありますが、その中でもっとも知られているのは、彼自身のイニシャルを名前に持った「AJランプ」でしょう。フロアスタンドやデスクスタンド、壁掛け照明器具として使われている「AJランプ」は、電球にスチールのシェードをかぶせた、実用的で単純な成り立ちながら、その微妙に傾いた脚のデザインや、ラッパのような灯具の形で、一度見たら忘れられない可愛らしさがあります。伝統的な木製家具にも、シャープな現代建築のデザインにも、違和感なく溶け込んでしまうことも特筆できるところでしょう。
屋外専用に開発された、LEDを使った「AJランプ」 画像提供:ルイスポールセン
この「AJランプ」は、ルイスポールセンの照明器具の中では比較的シンプルな作りで、ランプの種類が変わっても対応しやすいことから、現在、LED化も進められています。今回は、できたばかりの外部用ブラケット器具(壁付照明)を見せてもらいました。
屋外専用「AJランプ」 はシェードが鋳物になっている。画像提供:ルイスポールセン
「AJランプ」の外部用ブラケットは、一見したところ、LEDの器具とは分からないのが一つの特長です。普通、LEDの照明器具は、光る部分(発光ダイオード)の粒がいくつも見えてしまい、見た目に違和感を感じたり、影が複数できてしまって不自然だったりするものですが、この器具では、光はシェードの中で柔らかく広がり、不自然さをほとんど感じません。それだけでなく、外部での使用にあわせて耐久性を高めるため、シェードを鉄板から厚みのあるキャスト(鋳物)に変更するなど、きめ細かな配慮がされていました。
現代的なLEDに対応させるにあたって、1955年から使われている伝統的なフォルムをそのまま生かしながら、ただランプを変更するだけでなく、新しいランプに適したディテールを妥協なく追求していることに、ルイスポールセンの照明器具に対するこだわりが強く感じられます。
「PHランプ」と「ムンケゴー」、それに「AJランプ」、いかがだったでしょうか?次回は、ルイスポールセンの「これから」。LED専用に開発した照明器具など、
ルイスポールセンの最新の照明器具たちをご紹介します!