ルイスポールセンの代表作から最新作まで見られるショールーム
1920年代に誕生し、現在も販売され続けている「PHランプ」は、手元の明るさだけでなく、上面にも柔らかい光を拡げ、眩しさ(グレア)のない照明器具です。世界に先駆けて誕生した、この「人にとって快適な照明」は、今なお私たちに多くのことを教えてくれます。
今回は、ポール・ヘニングセンがデザインした伝説的な照明器具「PHランプ」について、さらに、ルイスポールセン社の器具を手がけた、もう一人の代表的デザイナー、アルネ・ヤコブセンについて、詳しくご紹介していきましょう。
PHランプの仕組みとは?
照明コンサルタント・高橋亜須未さん
その仕組みについて、タルジェッティ・ポールセン・ジャパンの照明コンサルタント、高橋亜須未さんが、モデルを使って説明してくれました。
「PHランプのデザインを構成するシェードは、器具の中央に位置する電球から四方に広がる光が、それぞれのシェードのちょうど先端まで届くよう、角度や大きさがデザインされています。」
と、高橋さん。
「電球の位置が高すぎると、外から電球が直に見えて、眩しさ(グレア)を感じてしまいます。逆に電球の位置が低すぎると、シェードの端まで光が届かず、羽に黒い影ができてしまいます。光が当たらない影の部分は、『機能的に無駄な部分』ということ。こうしたことがないように、電球の位置やシェードの大きさは、きわめて厳密に設定されています。つまりPHランプは、全ての部分に、機能・意味があるのです。」
80年以上昔にデザインされた「PHランプ」が、今でも飽きが来ず、古くささを感じさせないのは、こんなところに秘密があるのかもしれませんね。
もちろん、このシェードの意味は、単に眩しさを防ぐだけではありません。PHランプのシェードには、「光を必要な方向に向ける」という大切な役目もあります。実際に、シェードが1枚増えるごとに、手元の明るさが増していく様子も、実物で確かめてみることができました。
このように、すべてが無駄なく論理的にできているのに、デザインがあくまで優美なことも、PHランプの特長でしょう。デザイナーのポール・ヘニングセンは、「照明器具は、光っていない時でも美しくなければならない」という、強い信念を持っていたのです。
もう一人の天才的デザイナーとは? >次ページ