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人にとって快適な照明とは?~ルイスポールセン(2ページ目)

人にとって快適な照明とは何か。長年受け継がれてきた、ルイスポールセンの照明に対する考え方をお聞きしました。LEDを採用した最新製品などもご紹介しつつ、3回にわたってお伝えします。

執筆者:粕谷 奈緒子



「多才の人」ポール・ヘニングセン

ヘニングセン

「PHランプ」の生みの親、ポール・ヘニングセン
画像提供:ルイスポールセン

ルイスポールセン社は、1874年に、「コペンハーゲン・ワインインポート社」として創業しました。その名の通り、当時は照明には関係のない、商社だったのです。その後、20世紀の始まりとともに普及を始めつつあった電気設備資材を商いの対象とし、さらに照明器具の生産を始めたのは、1920年代になってから。そのきっかけは、当時の経営者と、一人のデザイナーの出会いにありました。
そのデザイナーこそ、現在まで使い続けられている「PHランプ」の生みの親、ポール・ヘニングセンです。

ポール・ヘニングセンは、現在一般的に考えられているデザイナーとは、かなり違う存在だったようです。学校では建築を学んだヘニングセンは、単なる照明デザイナーではなく、建築家であり、作家であり、新聞「POLITIKEN」の論説委員を務めるジャーナリスト・評論家でもありました。
ヘニングセンは、その歯に衣を着せぬ鋭い批評・物言いでも知られていました。例えば、20世紀の始まりとともに普及を始めたコンクリートで、建築家たちが自由で奔放な造形を謳歌し始めたころ、ヘニングセンは「仮に自由な形ができるとしても、その形には理由がなければならない」と厳しく戒めたと言います。

ヘニングセンは、照明についても独自かつ、明確な考えを持っていました。それは、
「照明は情緒ではなく、人間の目の生理に基づかなければならない。」
「照明は必要なところに質の高い光をもたらし、影も柔らかくなければならない。そこまで気を配って、照明器具はデザインされなければならない。」


というもの。妥協のない論理家だったヘニングセンは、こうした考えのもと、照明器具として最適な素材・形状を求めて、様々なシェードの設計を試みました。
室内にむき出しでぶら下げられた電球や、それに単に布のシェードを被せたようなものは、彼に言わせれば「照明器具」ではなかったのです。

PHランプの誕生


PHランプ

グレアを排除した代表作「PHランプ」 画像提供:ルイスポールセン


「照明器具は、絶対に眩しくあってはいけない。」というのが、ポール・ヘニングセンの考えでした。
むき出しの光(グレア)が空間にあると、一見、室内が明るくなるように思えます。けれども、私たちが実際に見たいものは、光に照らされた人々であり、本のページや、食卓に並んだ料理であって、光源(照明器具)そのものではありません。極端に明るいものが空間にあると、肝心の「見たいもの」が、逆に見えにくくなることを、彼は理解していました。
こうして「グレア」のない照明器具の開発が、ヘニングセンの課題となり、その結果誕生したのが、お皿を伏せたような形の3枚のシェードを持つ、「PHランプ」だったのです。
手元の明るさだけでなく、上面にも柔らかい拡散光を拡げる「PHランプ」。もちろんヘニングセンの目標通り、眩しい光源はどこからも見えないようになっています。そのデザインは当時は極めて先進的なもので、80年以上経った現代でも、全く古さを感じさせません。

アーティチョーク

アーティチョーク(通称:松ぼっくり)もグレアフリーの照明

PHランプ以外でも、ヘニングセンは「グレアフリー」の照明器具を幾つも生み出しました。
その中でも最も華やかなのが、「アーティチョーク」。その形状から、別名「松ぼっくり」とも呼ばれています。当初、あるレストランの特注照明器具としてデザインされたこのランプは、幾つにも分かれた銅のシェードで全体が覆われています。素材に銅を使ったのは、わずかに赤みを帯びた反射光が、テーブルで向かい合った人の肌を、より健康的に美しく見せることを、彼は知っていたからでした。
このようにヘニングセンにとっては、照明器具の形そのものよりも、照明器具の光に「照らされたもの」がどのように見えるかが、常に最も大切なことだったのです。

有名なPHランプの秘密は?次回も引き続き、ルイスポールセンの照明たちについてご紹介します!

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