雑貨/ハンドクラフト・工芸

水引作家 内野敏子さん 人と人との心を結ぶ水引の魅力

日本の伝統工芸である水引。その魅力にはまってしまった水引作家、内野敏子さんをご紹介します。

江澤 香織

執筆者:江澤 香織

雑貨ガイド


花のかたち
水引で作られた花

水引とは、和紙でできた紙縒り(こより)。水糊を引いて丈夫にすることから 水引と呼ばれるようになったのだそう。もともとは、 聖徳太子の時代、小野妹子が中国より持ち帰った贈り物に、 紅白に染め分けた麻紐が掛けてあったことに由来するとか。 旅の安全を祈り、心を込めた贈り物の習慣として広まっていったらしい。 結び方や本数、色など、細かな決まりごともたくさんあって、 きちんとした形式を学び出したらきりがない。 しかし、内野敏子さんはそんな水引の魅力にはまってしまった。 親が建築関連の仕事をしており、自分もインテリアが好きだったことから、 店舗デザインや住宅建築のアシスタントの仕事をしながら、 店舗のディスプレイなどにも携わっていた。 そのときにディスプレイの素材として水引に出会った。 ただ素直に、すごくきれいな素材だなあと思い、心にとどまっていた。 また同じ頃、水引と切り離せない「折形」という礼法を知り、 ますます水引に惹かれていったのだそう。その数年後、たまたま近所で開かれていた 水引教室に参加したことで、内野さんと水引のつながりは一層深まった。

お正月飾り お正月飾りとしても欠かせない水引

内野さんは水引を始めてもう10年目になる。 ここまで長く続けられたのは、水引という素材の魅力ももちろんだが、 心の師匠と言える人に出会えたことも大きいという。 その方は、とあるギャラリーのオーナーで、初めての個展もそこで開催した。 水引に関して何か迷いがあったときは、まずその方に相談すると、 自分の向かうべき方向が定まり、安心して作れるんだそう。

オブジェ うさぎ 複雑な形のオブジェから、ほのぼのとした動物まで、 作品のバリエーション
もさまざま。水引の延長で、最近は 籠編みも始めた。

内野さんは水引をあまり堅苦しくは考えず、今の若い人でも親しみやすいような、 様々なバリエーションで作品を作っている。 しかし決して日本の伝統を崩しているわけではなく、むしろ敬意を表しており、 まだまだ奥深い水引の世界に対して、常に学ぶ姿勢を続けている。 本当は、基本の色である紅白2色だけでシンプルに作ってみたいともいう。 「色に頼らず、結びの美しさで勝負したい。あくまで水引という素材 そのものの魅力を伝えたいんです」。

祝儀袋
ため息が出るような祝儀袋。
良い職人に出会い、紙の 質にもこだわる。

水引は「淡路結び」という結び方が基本。結び目があわびに似ていることから、 最初はあわび結びと呼ばれていたものが、なまったものだとも言われている。 この結び目の美しさも内野さんが水引に引かれたきっかけのひとつ。 淡路結びから応用して様々なバリエーションの結びができる。ひとつのシンプルな 結びから無限の結びが生まれてくることに魅力を感じている。 水引は一発勝負で、一度結び目を作ってしまったら、折り目がついてしまって元には 戻らない。内野さんは結ぶ前に精神を統一する。息を止め、気持ちをひとつに 集中させて、一気に結び上げる。

箸置き 内野さんの箸置きでご飯の用意をしてみたら、
きりっと気持ちよい感じになった。

個展やインターネットを通して、様々な出会いがあり、 多くのコミュニケーションが生まれた。イラストレーターやクラフト作家など 同じ「ものづくり」をする人たちとの交流も増えた。 まさに水引が人と人とを結んでいったようだ。 そんな出会いもパワーになって、2005年には熊本でお店を開く予定。 まだまだゆっくりな計画だけれど、ご自身の作品はもちろん、 陶器、木工、布、ステーショナリーなど、内野さんの目で選んだ、 工芸品や手作りのものを並べる計画である。だんな様もキャンドル作家として デビュー。お店の準備や作品作りで忙しい中も、楽しみながら充実した毎日を過ごしている。

箸置き



■内野敏子プロフィール■
1963年熊本生まれ
広告デザイン、建築設計等の仕事を経たのち、
1995年より水引工芸、2000年よりバスケタリーを始める
現在横浜市在住

内野さんのサイト Full Circle
結び方や素材、道具など、水引についての詳しい解説もあります。
http://full-circle.web.infoseek.co.jp/

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※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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