ファーマーズテーブルの本 [雑貨] All About

石川博子：文　石川源：写真　主婦と生活社

原宿・表参道にお店を構える雑貨店「ファーマーズテーブル」。私が初めてお店を訪れたのは、今はなき同潤会アパートの中にあった頃。朽ちてきた階段を足元に気をつけながら3階まで上がると、隠れ家のようにこじんまり、ぽっと暖かな光の漏れるお店がありました。当時雑貨屋といえば、デパートの中に入っている大きな有名店しか知らなかった私にとって、ここは衝撃的な空間でした。自分の価値観でものを選ぶ楽しさを教わった、数少ないお店だと思います。また、「作り手」というものを意識したのもこのお店が最初でした。

この本は、お店のオープンから今年までの20年間に関わってきた雑貨の紹介を中心に、作り手を訪ねる旅やオーナーである石川家の普段の暮らし方などについて、石川さんらしい語り口で丁寧に生き生きと綴られています。紹介されている雑貨はどれも石川さんが特に愛着を感じていて、長く愛されているもの、作り手の顔が見えるものばかり。ひとつひとつのものとの出会いにまつわるエピソードにも興味がそそられます。撮影はすべてご主人の源さん。そして娘の水木ちゃんもあちこちに登場し、家族がひとつになって生まれた、深く温かい愛情を感じる本でした。

ケメックスのコーヒーメーカー

本のご紹介にあたって、オーナーの石川博子さんにいくつかご質問をさせていただきました。

Ｑ１本を出版する上での思い出話を教えてください。

Ａ：終わってしまうと、何か忘れちゃうんだけど、でもやっぱり人との対談がすごく楽しかったかな？　今までも会って話しはたくさんしても、また改めてその人の考えを聞くのは楽しい。なるほどなぁーとか、自分と一緒とか・・・

Ｑ２．ファーマーズテーブルが出来てから、20年を振り返って思うこと、感じることはありますか？また、これからやってみたいことは？

Ａ：２０年振りかえっては別にないです。あっと言う間でついこの間始めたよーな気がします。今後も今までと同じよーに、自分のお店に自分も感動でき、いらしていただいたお客さまや、かかわっていただいてる人たちにドキドキ、ワクワクが伝えられたらいいです。

Ｑ３．石川さん夫妻（そして娘さん）にとってファーマーズテーブルとは何ですか？

Ａ：ファーマーズテーブルは私が主人と結婚した年に始めました。７年後に娘も誕生しました。そして２０年、ファーマーズテーブルは石川家の生活と共に育ってきました。

Ｑ４．読者のみなさんにお伝えしたいメッセージなどありましたらお願いします。

Ａ：これからも今までと同様にあたたかい目で見守って下さい。

メッセージをどうもありがとうございました。

左：麻のキッチンクロス
右：三谷龍二さんのバターケース

さらに、この本を編集した田中のり子さんからもメッセージをいただきました。

雑貨好きなら知らない人はいない、表参道の「ファーマーズテーブル」がこの３月にオープンして２０周年を迎えました。この本はその２０周年の節目を目指して制作された本です。オーナーの石川博子さんは気になるものがあるとまず自分自身が生活の中で使ってみて、よかったらその商品をお店に置く、ということを長年やってきていらっしゃる方です。だから今回の本の中に登場するものたちも、博子さんが普段の暮らしで愛用しているものばかり。それを旦那さまの源さんが、写真撮影してくださいました。実は源さんはプロのカメラマンではないのですが（本業はグラフィックデザイナーをしていらっしゃいます）愛情が画面に入りこんでいて、ものがそれぞれ生き生きと輝いていると思います。

今回のお仕事でご自宅に何度となく足を運びましたがそのたびに感動するのは石川家の仲のよさ。楽しくて明るくて好奇心いっぱいで、「家族はいいなあ、家はいいなあ」といつもうらやましくなってしまいました。「ファーマーズテーブル」に並ぶものたちがいつも輝いているのは、そんな楽しい家族と家のための雑貨だからなのね、と改めて感じ入ってしまいました。

本書はそんな石川家のものへの愛情がたっぷり詰まった１冊です。雑貨好きなら、ぜひお手にとっていただけると嬉しいです。

（編集担当・田中のり子）

田中さんありがとうございました。