大人の乙女心を掴む布小物たち [雑貨] All About

細かく丁寧なデザインに心がきゅんとする。鳥はトレードマーク。

「TOLBIAC」ブランドを立ち上げた、ハンドメイド作家・奥山千晴さん。彼女の作品を初めて見たのは、青山にあるドゥミシェルフというお店でした。繊細な編みこみと絶妙な色のバランス。ビーズやボタンがちょこちょこと施されたかわいいブレスレットに引き込まれてしまって、あっという間に衝動買い。その後偶然にもご本人とお会いすることができたのでした。

ミニテーブルの上に何気ないチビバッグ。
ちょっとしたお買い物に使うとか。

奥山さんのご自宅はとてもシンプルですっきりとしたお部屋。どちらかといえばモダン、と思われる北欧風のインテリアのところどころに、奥山さんらしい柔らかなテイストの手作り品が、ぽつんぽつんとアクセントのように並んでいます。中にはお母様の手作り品も。洋裁好きでセンスの良いお母様の影響を受け、小さな頃から何かを手作りするのが大好きだったのだそう。文化服装学院を卒業後はアパレル会社を経て、昨年より作家活動を開始。今年の2月には初めての個展を開催しました。

奥山さんのルーツを匂わせるお母様の作品。
ミシンの前にちょんちょんと並ぶりんごの針刺しはほのぼのとした色使い。
手の込んだキルトも全部手作りの大作。

奥山さんの妹はパリに住んでいるので、ときどきフランスへも旅立ちます。「TOLBIAC」というブランド名もパリのメトロの駅名です。響きがかわいくて親しみやすい感じが気に入って付けたんだとか。ロゴマークは青い小鳥。鳥のモチーフが好きだそうで、のびのびと飛んでいる姿は、どこか奥山さんに似ている気がします。

左はお菓子の空き箱を利用した裁縫箱。
右はパリで仕入れてきた布。奥山さんならではのセレクト。

パリではモンマルトルの生地屋さんめぐり。モンマルトルは日本でいう日暮里のように、布屋さんが立ち並ぶ界隈です。ヨーロッパの布は、色の発色が日本のものとはぜんぜん違う、と奥山さんは言います。見る生地見る生地かわいくて、どれを選んだらいいのかそうとう迷ってしまったそう。また、片言のフランス語がなかなか通じず、反物で売っている布を必要なサイズに切ってくれなくて困ったとか。思い出の詰まった、色とりどりの布をずっしりとスーツケースに押し込んできました。パリの帰りにはデンマークにも寄って、アンティークのグラスやレースをたくさん買い込んできたそう。デンマークで見た風景やお土産のひとつひとつも、奥山さんの作品に大きなインスプレーションを与えているようです。

左：小さなハギレもバスケットにとっておいて大切に使う。
右：アンティークのコースターはデンマーク土産。

奥山さんは素材を感覚的に捉え、作りながら作品のかたちを考えていく、といいます。最初からできあがりの完成図があるのではなく、作っていく過程で、アイディアの向くままに色の組み合わせを試したり、ひらめきでレースやボタンを施したりするので、思いがけない発見も多いのだとか。自分はこんな感じも好きだったんだ！と気付いて、新しい作風を次々に生み出していくのが楽しいのだそうです。だから基本的には作品は１点もの。これからの季節はキルトが中心だけれど、秋には得意のニットものも作りたいとのことでした。また、今後の買い付けに向けて、フランス語の勉強も始めたそうです。最近できたばかりのホームページでは、自身の作品の他に、ヨーロッパの蚤の市で見つけてきたお気に入りのアンティークなども紹介していく予定だそう。ゆっくり自分らしく、生き生きと楽しそうな奥山さんの人柄が作品にも表現されていました。