陶芸家の工房へ・伊藤　環の器(2ページ目)

築100年の材木屋を改装して工房に

上左は工房の天井。年月を感じさせる造り。上右はうつわを焼く窯です。 さて、工房の中に入ってみると、どっしり構える太い木の柱。 上を見上げると、精巧な木組みの天井が建物の古さを物語ります。 関東大震災にも耐え抜いたそうですが、ゆがんだままに補修構築されたため、 よーく見ると、天井がわずかに斜めになっているのだとか。 伊藤さんは、この古き良き工房で一日を過します。 さっそく、土を練っていただきました。大きな塊を くいっくいっと一定のリズムで押していくと、巻貝のように きれいな模様を描きながら、土がぴしりとしまっていきます。 ただうっとりと眺めるばかりです。陶芸を始めて17年という手さばきは、 身のこなしがもう、作品の一部なのですね。



土をよく練ったら、ろくろで形を整えます。土のうねりを丁寧に取ると、いざ成型するときに
土がよく伸びて、コシが出るのだそうです。コシのあるうつわは薄くても割れにくいとか。


あっという間に完成。だいたいひとつ1分程度で制作するそうです。
職人的手早さと完成度の高さは、九州という土地柄が鍛えた賜物。


焼き終わった作品がずらりと並んでいます。
これから釉薬をかけて、もう一度窯に入れます。


都会への憧れが強く、初めて東京へ来たときは、感動と衝撃で体がぞくっとしたとか。 若い頃は、リュックに自分の作品を背負って、都内のお店を一軒一軒回ったこともあったそうです。 今年になって、関東圏に住むことになったのは、偶然の巡り合わせでした。 ひょんなきっかけで出会った縁が、不思議なくらいに次々と繋がって、 大きく広がっていく、躍動の年だったよう。 それでも誠実にコツコツと、伊藤さんは作品を作り続けます。

「来年は東京で初の個展です。ラ・ロンダジルさんでは、琺瑯っぽい質感の 作品をたくさん作る予定ですので、また違った雰囲気を楽しんでいただけたら嬉しいです。 今後は花器とか、一点ものにも力を入れたいですね。オブジェ的な要素を含んだ、 遊べる範囲の広いものに挑戦したいです。器もちょっと個性的なものを。 また、白磁はずっと追いかけていきたいジャンルです。 李朝の白磁がやっぱり好きなんですが、 最近やっと理想に近い色が出るようになったんです。７年かかりました。 白磁って、モダンを意識しながらも、日本人らしい食生活を感じられるうつわだと思うんです」。
気さくでオープン、さっぱりと飾らない雰囲気の伊藤さん。 そんな伊藤さんらしい、懐の深いうつわがきっとたくさん並ぶのでしょう。


■2006～2007年・冬の展示会■

客家展
2006年12月20日（水）～28日（水）　2007年1月6日（土）～14日（日）

2007年1月13日（土）は、『客家邸の食卓』～　料理と器と音楽と～
伊藤さんのうつわで、セトキョウコさんの料理を味わい、 青木隼人さん、入江泉さんの演奏を楽しみます。
参加費　\1,800 / 1人様
各回　6名様　＊要予約

haco
神奈川県三浦郡葉山町長柄409
tel　046-876-0309
open　12:00～19:00　会期中無休
http://www.h7.dion.ne.jp/~shushu/


個展
2007年2月10日（土）～17日（土）

ラ・ロンダジル
東京都新宿区神楽坂3-4
tel　03-3260-6801
open　12:00～19:00　　日、月曜定休
http://la-ronde.com/


個展
2007年3月13日（火）～4月1日（日）

うつわクウ
兵庫県芦屋市西山町3-11ラフェルテ芦屋川1F
tel　0797-38-8339
open　10:00～18:00　　月・火定休
http://www.utsuwa-KU.com