PAPIER LABO. 紙と活版印刷の新たな可能性(2ページ目)

古いお菓子ケースを什器に。

何も分からず、活版印刷所へ

お店の片隅にある、小さな活版印刷機。 さて、あっという間にオープンしたお店ですが、３人はかねてからの知り合いだったわけでもなく、 ちょっと前までは、お互い全く別の分野で活動していたそうです。

元々絵が好きだったという武井さん。会社を辞めた後、しばらくふらふらとしていたら、偶然活版印刷に出会いました。 何か自分で表現できることをしたい、と漠然と思っていたことが、ここで急にピンと来て、 いきなり活版印刷所に手紙を書いてしまったそうです。 「ポストに投函した瞬間、しまった！と思いました。こんなことするの、初めてだったので。 印刷所は曇りガラス越しに見ただけで、直接話すにはちょっと怖かったんです。 私自身、活版印刷のことは何も知らなかったし、何から何まで職人さんに教えてもらう身分でした。 毎日質問攻めで、最初の頃は怒られどおし。ケンカばっかりしてましたよ」。 しかし、武井さんは決して食い下がらなかったそう。探究心旺盛な性格、活版に対する意気込みと確信のようなもの は職人さんにも伝わり、次第に打ち解けていって、今ではすっかり仲良しに。 「すごく人間味があって、尊敬できる人なんです。いつも元気をもらっています」。



左から武井さん、江藤さん、高田さん。
３人集まると、ゆるーく楽しげな雰囲気。

SAB LETTERPRESSとして活動を始めた武井さん。2006年秋に行われた作品の合同展示会で、江藤さんと出会いました。 江藤さんも以前より活版印刷に注目していたひとり。 仕事で行く海外買い付けなどでプライベートプレスやショップカードの活版印刷を目にし、コレクター的に 集めていたそうです。そんな二人なので意気投合するのも当然のこと。 その後いろいろな印刷所を見学して回るようになり、そのときに出会ったのが高田さん。 高田さんも昔からの活版好きで「子供が新幹線を好きだというくらい、無邪気に好きだった」そう。 学生時代は活版印刷所に就職しようかと本気で思っていたこともあったとか。 その後グラフィックデザイナーとして活動していましたが、この出会いをきっかけに、いきなり活版印刷の機械や活字一式を引き取ることに。 現在は印刷技術を習得するために、修行中の身でもあります。



シンプルだけど、ちょっと捻りのあるステーショナリーが並ぶ。

そして５月には「活版再生展」という展示が行われました。姿を消しつつある活版印刷を回顧的に再現するというだけでなく、 現在活躍中のグラフィック・デザイナーやアーティストに参加してもらい、作品を製作・展示することによって、 活版印刷の新しい可能性を引き出す、というユニークな試みでした。 書体を選び、文字間や行間に空白の詰め物を入れ、美しく並べるのは、職人の技量とセンス。 手作業だからこそ、微妙な文字のずれやインクのムラに、人のぬくもりが感じられるのです。 このような体験で、ますます活版印刷の魅力にはまっていった３人。 展示に参加したことが一気にみんなのモチベーションを高め、 お店を作るというビジョンが、はっきりと浮かび上がったそうです。 「同じ感性の３人が集まったので、迷いはありませんでした。不思議と、音楽や服の趣味も一緒だったりするんですよね。 でも感性が同じといっても個性はそれぞれだったり。そこも心強いところです。 今後はお互いの得意分野を活かしながら、楽しく活動していければと思っています」。


窓辺には、優しい顔をした招き猫がちょこん。

PAPIER LABO.（パピエ・ラボ）
東京都渋谷区千駄ヶ谷3-52-5 #104
TEL：03-5411-1696
営業時間：12:00～19:00　月、火曜日定休
http://www.papierlabo.com/



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