外から見ると、一見何のお店か分かりません。
東横線の横浜駅から2駅目、東白楽はのどかな住宅街の広がる、 穏やかな町です。駅を出たら信号を渡り、大通りをまっすぐ歩いて2、3分 のところ。しかし、黒いひさしに黒いフェンス、何の飾りもなく無機質で素っ気無い外観。 知らなかったら気にも止めずに通り過ぎてしまいそうなくらい、 ひっそりと目立たない存在です。 ガラス張りで中はよく見えますが、 がらんとした部屋に、ポツリポツリとものが並んだ風景は、 入るのを一瞬ためらいます。この独特な空間の醸し出すストイックな雰囲気が、 人によっては敷居が高いと感じるかもしれません。 でも、決してそんなことはありません。 まずは鑑賞するような気持ちで、静かに中へ入ってみましょう。
アイヌの言葉の響きに惹かれて
静かな時間が流れています。 |
この店のオーナーであるアワヤタケシさんは、木をメインに家具や小物を 制作する作家。最初は作業場兼倉庫のつもりで借りた物件でしたが、 駅からも近く程よいスペースであるため、自分らしい空間を表現する場所 として、オープンすることにしたそうです。 お店の名前は自身の屋号でもある「chikuni(チクニ)」。アイヌ語で「木」を意味します。 アワヤさんは以前よりアイヌの民芸が好きで、様々な本を読んだり、 展示を観に行ったりして知識を深めていました。 「アイヌの民芸はひとつひとつに深い意味があり、知るほどに強く惹かれます。 アイヌの生活に欠かすことのできない、木に対する想いなど、 自分の感覚にも近いものを感じていました。 日本語でも英語でもない、不思議に心地良い言葉の響きも気に入っています」。
様々な国や時代の道具が並ぶ。分からなかったら気軽に聞いてみよう。
空間を動かす、程よいリズムを持ったデザイン
スタッキングもできる椅子。重ねた姿が美しい。 |
「建築の学校でデザインや空間構成を学んだ経験があるので、 家具や道具の捉え方にも建築的な視点があるかもしれません。 サイズ、高さ、大きさなどに自分なりの法則があります。 基本は自分が欲しいと思うものですが、 空間に動きをもたらすようなものが好きですね。 あと最低限で全てをまかなっているものとか。 また、デザインはあくまでオリジナル。自分らしいデザインを追及していきたいです」。
シャープな中に木が持つ表情の温かさを感じる。鍋敷きや
ペーパーホルダー、まな板など、小物から家具まで幅広く手掛ける。
次ページでは、工房の様子などもご紹介します。