住みたい街 首都圏/キケンな街の見分け方

災害に強いのは燃えない、逃げられる街

首都圏では今後30年間にM7程度の地震が起こる確率は70%といわれています。つまり、これからの街選びでは災害対策が一番重要。キーワードとなるのは「燃えない」「逃げられる」の2つです。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

なぜ、燃えにくい、逃げられる
街選びが大事か

新築マンション
新築住宅であれば、よほどのことがない限り、関東大震災クラスの地震でも倒壊はしないとされている
最近のマンションや一戸建ては、関東大震災レベルの地震が来ても、よほどのことがない限り、倒壊する心配はありません。しかし、建物が倒壊しなかったとしても、それで安心というわけではありません。その理由として挙げられるのは、地震の被害は揺れによる建物の倒壊だけではないということです。


消防車
阪神・淡路大震災が起きたのは火を使っていない早朝。それでも大被害だったことを考えると、夕方など食事の時間帯だったらどうなるのか……
一般に地震による被害には直接被害、間接被害の2種類があります。さらに、直接被害には地震による揺れ、土地の液状化などといったものと、そこで二次的に起きる火災や津波などといったものの2種類があります。地盤のしっかりした場所に建てられた、新しい建物であれば、前者はあまり心配しなくても大丈夫ですが、問題は後者の火災や津波。特に市街地に住んでいる場合には火災が最重要課題になります。

また、間接被害では中越地震で起こったように避難所での死や、ライフラインが止まったことによるものなどが考えられます。マンションの場合で考えると、建物は倒壊しなくても水道、電気が止まってしまえば、避難所生活を余儀なくされる可能性がありえます。

以上のことを考えると、これから街を選ぶ際には、燃えにくい街であること、避難がしやすいことは非常に大事なポイントとなってくるわけです。では、以下に何がチェックのポイントになるかを見ていきましょう。

地域の建物の構造・築年数に道幅、空地で
燃えにくさを見る

古い木造住宅
古い木造住宅が路地を隔てて建ち並ぶ。こういうエリアが危険
地域の燃えにくさを考えるときに、考慮したいのは3点。ひとつは地域に建っている建物です。具体的には、木造住宅、新耐震基準以前(昭和56年試行)の古い建物がどのくらいあるか。木造住宅はもちろん、燃えやすいわけですし、古い建物は倒壊しやすい。そして、建物は倒壊すると燃えやすくなるため、この2種類の建物が多い地域は危ないというわけです。

次は道幅。阪神・淡路大震災の時、倒壊した住宅が道をふさいでしまい、消防・救助活動が遅れ、延焼を食い止めることができない事態が多く発生しました。そのときのデータを見ると、通れなくなってしまった道幅は4m。建築基準法では都市計画区域内にある建築物の敷地は、幅4m以上の道に2m以上接していなければならないと定めていますが、4mでは危ないのです。これが6mになると、両側から家が倒れてこなければ、倒壊後も人間が通り抜けられますし、それ以上になれば、消防車などの通行もできるようになります。

三鷹市の防災広場
三鷹市で建設している防災広場。敷地内には防災用品が備蓄されており、普段は公園として使われている
最後は火災を食い止めるための空地などのスペースです。具体的には短辺もしくは直径が10m以上で面積が100m2以上の公園、水面、鉄道敷、運動場、公園、学校など。また、幅員が6m以上の道路もここに含まれています。

こうしたいくつかの要素をまとめた指標が不燃領域率と呼ばれるもので、これが40%以上になると延焼の可能性が急激に減少、70%以上になると、ほとんど延焼はしないと言われています。その他の要素も含め、東京都住宅局が出している木造密集地域整備プログラム下図でも40%未満の地区は早急に対策が必要とされています。

木造住宅が密集している危険地域は?

木造密集地の地図
危険な地域は環七沿い、意外に都心近くに集中している。東京都住宅局「木造密集地域整備プログラム」より


逃げやすさは道幅、道路の状況、
避難場所への距離、位置関係で見る

国立のメインストリート
計画的に作られた街では車道、歩道が分けられていて安全で、かつ災害にも強い
避難を考えたときに、大事なのは逃げ道と逃げる先の2点。つまり、道路と避難場所です。まず、道路という観点では、燃えにくいと同様、逃げやすくもあるのが、広い道。細い道に多くの人が殺到しては逃げようがありませんし、うっかり転べば、命の危険にも関わります。

埼玉県の広域避難所
災害時にはいつもより移動に時間がかかる。あまり避難所から遠くない地域が理想だが

次に避難所ですが、これには大きく分けて2種類があります。ひとつは小中学校や自治体の設備などを利用した一時的な避難所。被災時に仮の宿泊所ともなります。すぐに逃げ込めるように、徒歩10分圏程度に点在しています。もうひとつはもっと火災が広い範囲におよび、最悪の事態になったとき、熱や煙、有毒ガス、浸水などから生命の安全を確保するための、広くて延焼の危険のない、広域避難所です。東京都の場合には200カ所ほどありますが、大きな公園などを利用するため、場所によっては避難所までかなり時間がかかる可能性もあります。

では、次ページで、実際の燃えにくさ、逃げやすさを調べる方法を見ていきましょう。
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