治療方針の悩みにヒントを与える「セカンドオピニオン」
自分が受けようとしている、または受けている治療内容について悩みがある……。そんな時にはセカンドオピニオンが非常に有効です
私は、1998年に自分で「セカンドオピニオンサービス」というサイトを、ホームページ作成ソフトを使って立ち上げていたことがあります。インターネットを介すれば、他の医師の意見も尋ねやすいのではないかと思ったからです。
そのころはセカンドオピニオンに対する認知度も現在ほど高くなく、患者さんから受ける相談メールにも、「こんなことを主治医に言ったら、怒られそうなので……」という言葉が多く見られました。意外に小さなことでの相談も多かったと記憶しています。あれから12年。時代は確実に移り変わり、今ではセカンドオピニオンはずいぶんと一般的になってきたようです。
しかし、気をつけないと行けない点もあります。セカンドオピニオンとは、そもそも何のための制度なのか、どのような姿勢で受けるべきなのかを知らずに利用すると、貴重な時間や治療費を多く使ってしまう上に、自分でも情報が処理しきれなくなって混乱してしまうことがあるのです。2つの注意点を以下で解説します。
セカンドオピニオン=「転院の準備」ではない
あまり強調されていませんが、セカンドオピニオンの原則は「現在の主治医にかかること」を前提としています。今の主治医から提示されている治療法の妥当性や意義などを、全く関係のない医師に尋ね、意見を聞くことで、納得して治療に望めるようサポートする制度です。上記の目的がある一方で、現在の日本では、良くも悪くも医療に関して「フリーアクセス」が保証されています。患者さんはいつでもどこでも、紹介状などの制限なしに、自分が好きな病院を自由に受診することができるのです。
その影響か、「主治医を変えて、違う病院に移るため」という目的で、セカンドオピニオン外来を受診される方がいらっしゃるようです。これはセカンドオピニオンの趣旨とも少し違っています。また、セカンドオピニオン自体が保険診療ではない自費診療なので、新たな検査や治療などをセカンドオピニオン外来で受けられるわけではないのです。
無意味で危険なドクターショッピングに迷い込まないために
患者さんの状態を最もよく把握し、治療に熱心に取り組んでいるのは、目の前にいる主治医。セカンドオピニオン活用の際には、このことを忘れずに!
ドクターショッピングが起こりやすいタイプの一つに、「手術を受けたくない」という患者さんが挙げられます。
現在の主治医は手術を受けた方が良いと言っている。しかし、自分は絶対に受けたくない。こんな時には、「手術をしなくても良いですよ」と言ってくれる先生にあたるまで、セカンドオピニオン外来受診を繰り返しがちなようです。
これでは治療が前に進みませんし、病気の進行を考えても無駄に時間を経過させるのは好ましくありません。場合によっては、医学的には疑問を感じるような民間療法に迷い込んでしまう可能性もあります。私は、このような事態は、絶対に避けるべきだと考えています。
そもそも、現代の医療は疾患に対してベストとされている標準的治療法がガイドラインとして定められており、医療機関ごとに治療法が大きく変わるわけではありません。3回、4回とドクターショッピングを繰り返しても、従来と大きく異なる治療法を提示してくれる医師は、まずいないと考えた方が良いでしょう。
セカンドオピニオンの鉄則と心構え
いつも申し上げるのですが、隣の芝は青く見えるものです。そして、患者さんの状態を一番よく知っているのは、今まで治療を行ってきた目の前の主治医です。セカンドオピニオンは、基本的に1回まで。そして、その目的は、「現在の主治医による治療が標準的な治療であることを確認することであること」を念頭に置いていただくことが、セカンドオピニオンの上手な活用においては大切なことだと思います。