いつまでも健康的に過ごしたいですよね
認知症の予防には以下の4つが大事です。
- 魚・野菜・果物を多めにした食事
- 一日30分以上の定期的な運動
- タバコは我慢、お酒はほどほどに
- 頭をよく使うこと
すなわち、農作業は、”脳”作業であり、認知症の予防を自然に行っているのです。
「年だから……」「しょうがない」とあきらめるのはまだまだ早いのです。
ここでは、医学的に正しいと考えられている予防法について説明していきます。
見直してみよう、食習慣
食習慣を改善することが、健康への第一歩です
栄養バランスのよい食事を心がけ、生活習慣病を予防していくことが、認知症の予防への近道だというわけです。
それでは、具体的な食事の内容を見ていきましょう。
■よい油はオメガ3系!
私たちが料理に使う油には、身体によい油と悪い油の2種類があります。
よい油は、オメガ3系とよばれる油で、亜麻仁油、シソ油、そしてサバ・サンマ・イワシのような青魚に多く含まれるEPA・DHAです。
よい油は、動脈硬化を予防し認知症を防ぎますので、一日一匹の青魚を取るようにしましょう(*1)。
*1)Dietary patterns and risk of dementia: the Three-City cohort study.: Neurology. 2007 Nov 13;69(20):1921-30.
■身体のサビをとるビタミンCとビタミンE
ビタミンCとビタミンEは、抗酸化物質と呼ばれ、脳血管のサビを防いでくれます(*2)。
これらは、野菜や果物に多く含まれているので、積極的に摂りましょう。
ビタミンCが多く含まれる食品・・・柿・オレンジ・キウイ・グレープフルーツ・苺など
ビタミンEが多く含まれる食品・・・モロヘイヤ・ニラ・カボチャ・ほうれん草・アーモンドなど
栄養成分を摂取するにあたり、考慮しなければならないのは調理による損失です。ですから、生で食べられる果物は、調理による損失を考えなくて良いので有効な摂取方法といえます。
ビタミンCは水に溶け、熱に弱いので、「ゆでる」「煮る」よりも、「炒める」ほうが損失が少なくてすみます。また、ゆで汁や煮汁を使用するスープはビタミンCが溶け出していますので有効な調理法です。
逆にビタミンEは油に溶けるので、炒めて食べる調理方法がお勧めです。
*2)Reduced risk of Alzheimer disease in users of antioxidant vitamin supplements: the Cache County Study.:Arch Neurol. 2004 Jan;61(1):82-8
■塩分のとりすぎは血圧が上がります
高血圧は動脈硬化を進行させ、脳細胞のダメージを引き起こし、結果として認知症を進行させます(*3,4)。高血圧の原因は、塩分の取りすぎですから、あまり味が濃いような食事はさけましょう。
目安として一日7g以下が理想と言われていますが、まずは一日10g以下を目指しましょう。たとえば、ラーメンや味噌汁を食べてもスープを残したり、減塩しょうゆを使用したりすることは塩分摂取量を少なくすることができます。味覚はひとそれぞれですから、塩分測定器を用いて味噌汁やスープの塩分を測ることは有効です。
*3)Reducing the risk of dementia: efficacy of long-term treatment of hypertension.: Stroke. 2006 May;37(5):1165-70. Epub 2006 Apr 6.
*4)Effects of Age and Hypertension Status on Cognition:The Veterans Affairs Normative Aging Study:Neuropsychology In the public domain
2005, Vol. 19, No. 6, 770–777
一日30分以上の運動が大切
適度な運動をして認知症を予防しましょう
車やエレベーター、科学技術の発展により便利な世の中になりました。しかし、その恩恵を受けた結果、私たち現代人は40年前に比べて身体活動量が40%以下に落ち、深刻な運動不足となりました。
週一回のまとめて長時間の運動をするよりも、30分くらいの短時間でいいので、毎日、身体を動かしましょう(*6)。
また、物忘れを自覚している人に6ヶ月間の運動を行うと認知機能が改善しますので、今からでも遅くありません。明日からとは言わず、今日からでもカラダを動かしましょう。(*7)。アメリカのメイヨークリニック・アルツハイマー病研究センター長のロナルド・ピーターセン先生は、「規則的な運動は、薬、知的活動、サプリメント、ダイエットより、現在、私たちが知っているアルツハイマー病の予防の最善の方法らしい」といっているのをお忘れなく。
*6)Exercise is associated with reduced risk for incident dementia among persons 65 years of age and older.: Ann Intern Med. 2006 Jan 17;144(2):73-81.
*7)Effect of physical activity on cognitive function in older adults at risk for Alzheimer disease: a randomized trial.: JAMA. 2008 Sep 3;300(9):1027-37.
■日常に運動を組み込みましょう
みなさんは仕事や子育てにおわれて、運動をする時間なんてなかなか取れないのが現実ですよね。しかも、仕事に疲れて、家に帰ってから運動なんて、普通はできません。
そこで、こんな発想をしてみたらどうでしょう。
運動をする時間を生活の中につくるのではなく、便利な日常生活をわざわざ不便な生活にして、むりやりカラダを動かすようにするのです。
たとえば、
- 近所のスーパーに行くのではなく、ちょっと遠い特売をしているスーパーに行く。
- バス停を一つ手前で降りて、バス代も節約してしまいましょう。
- エレベーター、エスカレーターはぐっと我慢する。
- テレビのリモコンでチャンネルを変えるのではなく、テレビまで歩いてチャンネルを変えましょう。
- 万歩計で歩いた距離を記録してみましょう。目標は一日8000歩以上。
- いつもの散歩道ではなく、毎日変えて見ましょう。新たな発見が脳を刺激します。
■良く噛んで顎の運動を!
私たちの脳は、よく噛む事により記憶の中枢である海馬が活性化するのです。
ですから、やわらかいものばかりを食べるのではなく、少し歯ごたえのあるものを意識して摂るようにしてみましょう。
歯が少なくなると、食べ物に偏りがでて、栄養バランスが崩れます。ですから、いつまでも歯を大事にすることが認知症予防には効果的です。
頭に善い習慣と悪い習慣
タバコは、万病のもと
タバコは、万病のもと
タバコと認知症の発病には大きく関係性があり、脳のMRIを見てみるとやはり隠れ脳梗塞が多い印象を受けます。そのため、脳の機能が低下し、物忘れの自覚を訴えるのです。また、タバコは、他人への迷惑にもなります。自分だけならまだしも、他人の煙をすってしまう受動喫煙も認知症の発症率を上昇させてしまいます(*8)。
自分の健康を害するだけではなく、他人にも影響を与えてしまう喫煙行為。今までタバコを吸っていたとしても、健康的な行動に生活習慣が変わることで、認知機能の低下になりにくいので、いますぐに禁煙しましょう(*9)。
*8)Exposure to secondhand smoke and cognitive impairment in non-smokers: national cross sectional study with cotinine measurement.: BMJ. 2009 Feb 12;338:b462. doi: 10.1136/bmj.b462.
*9)Smoking history and cognitive function in middle age from the Whitehall II study.: Arch Intern Med. 2008 Jun 9;168(11):1165-73.
■コーヒーは認知症を予防する!
フィンランド・クオピオ大学およびスウェーデン・カロリンスカ研究所教授のMiia Kivipelto氏による20年以上の聞き取り調査によると、コーヒーを1日3?5杯飲む中高年は、高齢になった時に認知症やアルツハイマー病を発症するリスクが60?65%低いという結果を公表しました(*10)。
なぜ、コーヒーが有効なのかは不明ですが、カフェインやニコチン酸の原料であるトリゴネンが多く含まれているからだと推測されています。
しかし、コーヒーの飲みすぎは、胃潰瘍などの原因になりますから、なにごとも程々が大切です。
*10)Midlife coffee and tea drinking and the risk of late-life dementia: a population-based CAIDE study.: J Alzheimers Dis. 2009 Jan;16(1):85-91
■緑茶を積極的に取りましょう
緑茶に含まれるカテキンが神経細胞を保護することが動物実験でわかっており、人へもその働きがある可能性があります。
また、緑茶に含まれるエピガロカテキンガレートを、人工的なアルツハイマー病マウスに投与したところ、アルツハイマー病の原因とされるベータアミロイド蛋白の生成を抑制することを認めたことから、積極的に緑茶を飲むことは認知症の予防につながるといえます(*11)。
*11)The Journal of Neuroscience, September 21, 2005, 25(38):8807-8814; doi:10.1523/JNEUROSCI.1521-05.2005
■フラボノイドを含むワインはOK!
飲酒と認知機能の低下には諸説ありますが(*13,14)。ほとんどの研究結果は、ビールで350ml、ワインで150mlほどの量であれば、飲酒は認知症を遅らせる効果があるかもしれないと結論付けていますが、決して大量飲酒は勧めていません。
特にフラボノイド多く含むワインを多く摂取している人は認知機能が高いことがしられています(*15)。
タバコと比べ、飲酒を肯定する研究結果が多いのですが、やはり飲みすぎには注意が必要です。
*13)Alcohol consumption, mild cognitive impairment, and progression to dementiaNeurology, May 2007; 68: 1790 - 1799
*14)Does low to moderate alcohol intake protect against cognitive decline in older people?: J Am Geriatr Soc. 2008 Dec;56(12):2217-24
*15)Intake of Flavonoid-Rich Wine, Tea, and Chocolate by Elderly Men and Women Is Associated with Better Cognitive Test Performance :J Nutr. 2009 Jan;139(1):120-7
コミュニケーションは脳が活性化します
「先月も旅行に友達と行ってきました!」「息子が食事に連れて行ってくれたんです!」
90歳をまもなく迎える患者さんがうれしそうにニコニコと毎月報告してくれます。やはり、積極的に外出する人、友達が多い人、そして笑顔が素敵な人は物忘れとは無縁なようです。
このように他人から刺激を受けたり、逆に他人に気を使ってみたり、コミュニケーションを取るということは、脳へ刺激を与え、活性化させているということなのです。ですから、逆に日常生活を何も感動がなく、あたりまえに過ごし、なんでも面倒くさい、おしゃれもしたくない、といっていると脳の機能は退化していきます。
また、周りがなんでも手伝ってしまう恵まれた環境は、高齢者の認知機能に悪影響を及ぼすこともあります。「自分のことは自分でしてもらう」といった家庭内での環境作りも認知症予防には必要です。
同じ趣味を持つ仲間たちがいるとコミュニケーションをとることが容易になり頭が活性化するだけではなく、ストレス解消にもつながり、人生に彩を添えます。特に頭だけではなく、手を同時に使うことによって、脳細胞が活性化するといわれていますので積極的に身体を動かしましょう。
創造的な趣味・・・絵画、楽器演奏、園芸、陶芸、生花、料理、俳句など
頭の体操・・・囲碁、将棋、麻雀、パズルなど
身体を使う趣味・・・カラオケ、社交ダンス、ゴルフ、ヨガ、散歩、旅行など
私たちの脳は無限の可能性を秘めています。使えば使うほど、脳は磨かれ、活性化していきます。
いつまでも、頭脳明晰でイキイキした生活をおくるためにも、できることから少しずつ始めてみませんか?