ピック病は、本人に病識がないので、周囲の人たちが気付いてあげる事が大切です。本文中のチェックリストにあてはまる場合は医療機関を受診しましょう。
ピック病は認知症を引き起こす病気の中では稀なものですが、症状に特徴があり、注目されています。頻度は統計によりばらつきがありますが、おおよそアルツハイマー病の約1/3~1/4くらいであろうと推測されています。男女差はありません。
ピック病の初期症状・症状
認知症を引き起こす代表的な病気である「アルツハイマー病」の場合、物忘れなどの記憶障害が初期症状として現れます。これに対してピック病は、物忘れよりも先に、性格変化や人格障害が初期症状として現れます。人間の情動をコントロールしている前頭葉の力が衰えてしまっても、記憶の中枢の海馬は比較的保たれているからと考えられています。
病状の進行に伴って自制力が低下するので、3ヶ月から1年くらいの時間をかけて、
- 相手の話を聞かず一方的に話し続ける
- ゴミを収集するなどの異常行動を取る
- 整理整頓が下手になり探し物が探せなくなる
ピック病の特徴は? ピック病チェックリスト
もしもピック病が疑われる場合は、群馬県こころの健康センターの宮永和夫所長(元群馬大学医学部神経精神医学教室)が作成された「ピック病チェックリスト」が非常に有用です。40~79歳の範囲で3項目以上当てはまる場合は、精神科・神経内科・脳神経外科を受診しましょう。とくに「物忘れ外来」と標榜している病院やクリニックなら専門家の受診ができます。1. 状況に適さない行動
場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや配慮を欠いた行動をする。周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為をする。
2. 自発性低下、意欲低下
引きこもりや何もしないなどの状態が持続し、改善しない。思い当たる原因は特になく、本人の葛藤もない。
3. 無関心、無感動
自己の衛生や整容に無関心になり、不潔になる。また、周囲の出来事にも興味を示さず無関心になる。
4. 逸脱行動
万引きなどの軽犯罪を犯す。しかし、自分が行った違法行為の意味を理解で傷、反省したり説明する事が出来ない。また、同じ内容の違法行為を繰り返す場合が多い。
5. 時刻表的行動
日常生活の色々な行動(散歩、食事や入浴など)を、時刻表のように毎日決まった時間に行う。この際、やめさせたり、待たせたりすると怒る。
6. 食べ物へのこだわり
毎日同じもの(特に甘いもの)しか食べない。さらに、制限なく食べる場合もある。
7. 常同言語、反響言語
同じ言葉を際限なく繰り返したり、他人が言った言葉をオオム返しする。他人が静止しても一時的にしか止まらない。
8. 嗜好の変化
食べ物の嗜好が大きく変わる(薄味だったのが、突然、甘味・酸味・塩分・油を好む)。アルコールやたばこなどは毎日大量に摂取するようになる。
9. 発語障害、意味障害
無口になったり、語彙(ごい)が少なくなる。または、「はさみ」や「めがね」などの品物を見せて尋ねても、言葉の意味や使い方がわからなくなる。
10. 短期記憶の維持
最近の出来事など、短期記憶は保たれる。また、日時も間違えない。外出しても道に迷わない。