糖尿病/糖尿病の経口薬・インスリン

あなたはどちら派? ビクトーザ vs. ジャヌビア

副作用の少ない糖尿病新薬「インクレチン関連薬」が注目を集めています。ただ、扱い慣れない医師が他剤との併用で低血糖のトラブルを起こしています。2型糖尿病は百人百様。薬も患者に合わせなくては……。

執筆者:河合 勝幸

ビクトーザ

ビクトーザ。1本で2~3週間分。薬価9,960円、もちろん健康保険が適用されます

副作用の少ない糖尿病新薬「インクレチン関連薬」が注目を集めています。ただ、扱い慣れない医師が他剤との併用で低血糖のトラブルを起こしているようです。2型糖尿病は百人百様。薬も患者に合わせなくては……。

2通りの糖尿病薬…経口薬と注射薬

インクレチンについては「ジャヌビア」記事で詳しく解説しましたので、重複を避けます。糖尿病薬は主に2通り。
  • インクレチンの分解酵素「DPP-4」の働きを阻害し、自分自身のインクレチンの作用を強める経口薬 (ジャヌビアなど)
  • GLP-1とそっくりになるように遺伝子組換えで合成した人工ホルモンを注射によって体内に入れる注射薬 (ビクトーザなど)

通常は、従来からある糖尿病薬との対比で新薬の効果を確認しますが、今回は同じ目的の経口薬と注射薬がほぼ同時期に使えるようになったので、どちらの薬が自分に合っているかが大いに気になるところです。

研究結果ではビクトーザの方が効果が高い

世界中の糖尿病者、医療関係者も同じ様に考えるようで、権威ある英国の医学誌『The Lancet (April 24, 2010)』にも、「ジャヌビア」と「ビクトーザ」を直接比べた論文が載りました。

結論から先に書きますと、ビクトーザ(一般名リラグルチド)の方がジャヌビア(一般名シタグリプチン)よりも、過去2ヵ月の平均血糖値を表わすヘモグロビンA1Cを下げる効果が強いことが明らかになりました。

研究では経口薬のメトホルミンだけでは十分に血糖コントロールが出来ない人たち(A1C 8.5%)を2グループに分けて、ビクトーザとジャヌビアを26週間投与し、A1Cを比べました。その結果、ビクトーザ組は平均1.5パーセント・ポイント下がってA1Cが7%に、ジャヌビア組は0.9パーセント・ポイント下がってA1Cが7.6%になりました。体重の減量もビクトーザで平均3.25kg、ジャヌビアで0.9kgでした。

ただし、吐き気のような副作用はビクトーザ組の4人に1人が経験したのに対し、ジャヌビア組は僅か5%の人たちだけでした。

この結果だけを見るとビクトーザの方が良いように思えますが、実はいろいろな意味が隠されていると思います。

「ビクトーザがよい」と言い切れない理由

上記の研究結果が出ているにも関わらず、ビクトーザがよいとはいえない理由を解説しましょう。まず上記の実験で対象とされている「A1C8.5%(日本のA1C換算では8.2%くらい)」というのは、かなりコントロールが悪いグループです。

私はジャヌビアはもっと軽い、食事と運動だけではコントロールできなくなったレベルでの第一選択薬だと思いますし、2型糖尿病は進行性の病気ですから、やがてビクトーザが最適になる時期が来ると思います。2型糖尿病になると、なぜかインクレチンが減ってくるのです。その結果、インスリンの強い第1相分泌がなくなって、インスリンが出るには出るのですが、ノロノロと遅くなるので血糖が高止りしてしまいます。この「ランセット」の論文は薬の優劣を調べたものではないのでしょう。それぞれの領域があるはずです。

また、ジャヌビアもビクトーザも新薬ですから、日本ではとても高価であるのも気になりますね。これに対し、SU薬やメトホルミンは効果も安全性も確立している古くてとても安価な薬ですからその差が際立ちます。

まずは自分の目標とするA1Cを医師と相談して決めましょう。そうすれば最適の薬が見えてきますよ。
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