特優賃10物件契約解除へ
特融賃制度は、入居者にとっては非常にメリットのある制度であるが、けして家主のための制度ではない。 |
前回、前々回と2回にわたって特優賃のメリットについてお話してきた。
しかし、それは入居者に限った話しである。
実は家主さんにとってその特優賃の制度の本質を見極めなければとてもリスクの大きい制度になってしまうのだ。
特優賃制度はなぜ、家主にとってリスクが高いのか?
家主さんにとっては10年間公社などの指定法人が家賃保証をしてくれるからリスクはなく、安定経営ができるものだと一般的には思われている。しかし、日経新聞に掲載されたように建物を借り上げている公社が建物所有者との契約を解除するような動きがでてきてしまった。本来なら、絶対にありえないと思われていたことである。
なぜこのような事態が起こるのか、特優賃マンションを建築したAさんを例にしてみよう。
<家賃保証契約が解除された例>
Aさんは、3LDKの近隣相場が1部屋13万円の土地に特優賃マンションを建築した。
特優賃マンションの場合、制度特有の仕様があり、建築費が高くなることが多い。
建築費が上がれば、家賃を高くとらなければ収支が合わなくなるため、設定家賃が必然的に高く設定されることになる。
Aさんのマンションの場合も1部屋当たり14,5万円で貸さなければ事業として運営していくことはできなかった。
しかし、家賃設定が高くても家主は公社との間で、家賃保証契約(空室であっても建物所有者に対して家賃を保証すること)を結んでいるから、その設定家賃をベースとして、一定期間、家賃は保証されることになるのである。
ところが、この家賃保証契約は10年で切れることになる。
11年目以降の家賃は保証されているわけではないので、それ以降の空室リスクは家主自身が負わなくてはならなくなるのだ。
そうなれば、Aさんはもともと近隣相場が13万円の立地にもかかわらず、設定の家賃が14,5万円であるから、家賃保証がなくなれば入居者の募集に苦戦することになる。
一方、公社も公社でそんなでたらめな収支計画だから、保証をしている物件の家賃が設定家賃を大幅に下回っても家賃は保証しなければならない。結果、赤字がおのずと膨らむことになった。
そして今回、その累積赤字についに耐えられなくなり、今回の家賃保証契約解除という最悪の事態になってしまったのである。
特融賃制度は、入居者にとっては非常にメリットのある制度である。
ところが、この制度は、入居者のためにある制度であって、けして家主のための制度ではない。
特優賃に限らず、さまざまな制度には、かならずなんらかのリスクがある。
そのリスクの存在をキチンと見極める目は、日頃からきちんと養うようにしてもらいたい。
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