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抗うつ薬とは……種類・効果・副作用・一覧

【医師が解説】うつ病に処方されるパキシルやデプロメールなどの「抗うつ薬」。抗うつ薬は実態のない「心」ではなく、脳内の神経伝達系に作用し、脳内の神経生理学的な環境を整える働きがあります。抗うつ薬の役割・効果・服用期間・副作用・主な薬一覧を解説します。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

抗うつ薬……うつ病からの回復に必要な治療薬

机に伏せるサラリーマン

抗うつ薬は病的になった脳の神経生理学的機能を正常化することで治療効果を得ています

病院でうつ病と診断されると、抗うつ薬が処方されますが、人によっては精神的な症状に薬を飲むことに少し抵抗を覚えるようなこともあるかもしれません。

場合によっては「薬を飲めば自分の弱さを認めてしまう」といった誤解も関与している可能性もありますが、うつ病から回復するために抗うつ薬は大変重要な治療薬です。

今回は抗うつ薬の目的・効果、種類、副作用などを詳しく解説します。

抗うつ薬の目的・効果……脳内の神経伝達系などに作用

抗うつ薬は神経生理学的に病的になった脳内の機能を調整します。うつ病は、親しい人との死別など、辛く悲しい出来事をきっかけに発症することも少なくありませんが、それは主観的な心の強さ・弱さを反映したものではありません。

病的な気持ちの落ち込みが起こる直接的な原因は神経生理学的にバランスを崩した脳内にあります。これを元の状態に戻していくために使用されるのが抗うつ薬なのです。

もし抗うつ薬に対して一種の抵抗感がある場合、正しい知識を持つことで、それをなくしていきましょう。繰り返しますが、抗うつ薬は「心」という、いわば実態のないものに働く不思議な薬ではなく、脳内の神経生理学的な環境を整える、具体的には「脳内の神経伝達系」などに作用する治療薬だということは是非知っておいて下さい。

抗うつ薬の服用期間・再発予防のための服用も

抗うつ薬に対して、落ち込んだ気持ちを高める、カンフル剤的なイメージがもしあれば、それは大きな誤解です。

抗うつ薬の効果が現われる、つまり、病的になった脳内の神経生理学的な環境をある程度、正常化するまでには、さまざまな要因が関与してきます。治療薬の種類や個人個人の健康状態などから、効果の発現まで1~2週かかる場合もあれば、数週間かかる場合もあるなど、抗うつ薬は飲んですぐ効果が出るものではない事は是非知っておきたいことです。

また、抗うつ薬は問題となっていた症状が無くなったあとも、ある程度の期間、服用を続ける必要があります。それは数日、数週間ではなく一般に数カ月、あるいはそれ以上になります。その時点では自覚症状がないだけで、脳内はまだまだ完全に正常化していません。もし抗うつ薬の服用がなくなれば、うつ病が再発しやすくなってしまうからです。

再発の確率は過去の再発数が多ければ、それに応じて高くなります。もし過去に再発が何回かあった場合、うつの症状が初めて出た場合と比べて相対的にかなり長期間の服用が一般に必要になってきます。

抗うつ薬の種類……三環系、四環系、SSRI、SNRI、NaSSA

抗うつ薬は、うつ病の原因と考えられている脳内の神経伝達系(セロトニン、ノルアドレナリン系など)に作用します。抗うつ薬の種類はその化学構造や作用機序などに基づき、三環系、四環系、SSRI、SNRI、そしてNaSSAなどがあります。

それらを開発された順に多少の重なりはありますが、古いものから並べると、「三環系→四環系→SSRI→SNRI→NaSSA」となります。一般に新しく開発された薬は脳内のターゲットにより選択的に作用します。治療効果はより高く、副作用はより少なくなります。

しかし、新しい世代の治療薬が古い世代より一方的に優れているとは必ずしも言い切れません。昔からある薬なら経済的な負担は新しい薬と比べれば一般に少なくて済みます。また、肝心の薬の治療効果も個人個人で薬との相性が異なることもあり、人によっては新しい薬より昔からあるものの方がよく効く場合もあります。

抗うつ薬の副作用……依存性のリスクは心配無用

まず抗うつ薬には、よく誤解されているような依存性はありません。抗うつ薬の副作用は、抗うつ薬が脳内のターゲットとする神経伝達系だけでなく、他の神経系にも作用があることが大きな要因です。以下のような症状が抗うつ薬の一般的な副作用です。

  • 口渇
  • 便秘・排尿障害
  • 眠気
  • 頭痛
  • 胃腸障害
  • 性機能障害

その他、抗うつ薬の投与早期や増量時には不安・焦燥や衝動性の高まりが見られることもあります。副作用が実際にどのような症状としてどの程度、どのくらいの期間、現われるのかには種々の要因が関与します。具体的には治療薬の種類、投与量、年齢、性別、薬物の代謝機能、そして身体疾患の有無などが複雑に関与し合うことが副作用の個人差を大きくしています。

主な抗うつ薬一覧……デプロメール、パキシルなど

以下に主な抗うつ薬一覧を挙げます。左側は一般名で、()内は商品名です。処方時には()内の商品名が使用されることが多いです。

■ 三環系
  • アモキサピン (アモキサン )
  • ノルトリプチリン  (ノリトレン )
  • アミトリプチリン (ノーマルン、 トリプタノール)
  • トリミプラミン (スルモンチール)
  • イミプラミン (イミドール、トフラニール)
  • クロミプラミン (アナフラニール)
  • ドスレピン (プロチアデン)
  • ロフェプラミン (アンプリット)
■ 四環系
  • マプロチリン (ルジオミール)
  • セチプチリン (テシプール)
  • ミアンセリン (テトラミド)
■ SSRI
  • フルボキサミン (デプロメール、ルボックス)
  • パロキセチン (パキシル、パキシルCR)
  • セルトラリン (ジェイゾロフト)
  • エスシタロプラム (レクサプロ)
■ SNRI
  • ミルナシプラン (トレドミン)
  • デュロキセチン (サインバルタ)
■ NaSSA
  • ミルタザピン(リフレックス、レメロン)

以上のリストから、実際に、どれが使用されるかは、個人個人の症状によります。共通して言えるのは、うつ病が完全に治らない大きな原因の一つに、「もう薬を飲む必要がない」という自己判断による服薬中止があります。自分で治ったと思った時点では、脳内の神経伝達系の機能はまだまだ不安定です。自己判断による服薬中止はうつを再発しやすくします。

もしも抗うつ薬を飲むのをやめたくなったら、必ず医師に相談してから……という事も、うつ病から回復するための大切な要素だということも、どうか頭においておいてください。
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