癌(がん)/がんの基礎知識・ステージ・転移

がんのステージ・進行度とは

【医師が解説】がんの治療を行う際には、「本当にがんかどうか」の質的診断、「どこにあるのか」という局在診断に加え、「どの程度進んでいるのか」の病期診断を行う必要があります。病期診断で確認する「がんのステージ・進行度」について解説します。

狭間 研至

執筆者:狭間 研至

医師 / 癌ガイド

がん治療前に重要な「質的診断」「局在診断」「病期診断」

がんのステージとは

がんのステージとは


健康診断でがんを疑われ、精密検査を受ける。誰しも、がんで無いことを願うとともに、万一がんの可能性があるのなら、一刻も早く治療したいと願うものです。

がんの適切な治療を行うためには、以下の3つの要件を満たす必要があります。
  • 本当にがんかどうかを確かめる(質的診断)
  • がんの場所を同定する(局在診断)
  • がんがどの程度進行しているのかを見定める(病期診断)
「質的診断」は、細胞の一部を採取して調べる「生検」で確認します。「局在診断」は、レントゲンやCT、超音波検査(エコー検査)などにより、どの場所にがんがあるのかを明らかにします。

そして「病期診断」は、もともとの病巣の大きさや進達度、リンパ節や他の臓器への転移の程度を検査して判定します。
 

がんのステージの考え方……I期・II期・III期・IV期の分類

病期診断では基本的にIーIVの4つのステージに分類し、「ステージI」「II期」という風に結果を告げられます。病巣の大きさなども確認しますが、まず最も重要な指標となるのは、他の臓器への転移があるかないかです。

もし他臓器への転移があれば、「IV期」という最も進んだ病期として判定されます。他臓器への転移がなければ、もともとの病巣の大きさとリンパ節への転移の程度を指標として分類していきます。基本的には、病巣も小さくリンパ節への転移がない状態がI期です。そして、病巣が大きくなったり、リンパ節への転移が進むにつれて、II期、III期とあがっていきます。

この分類は、どの部位にできたがんかによって、多少異なります。また、I期をIa期とIb期に分けるなど、細かく分類する場合もあります。
 

がん治療開始までの2~4週間は、治療方針確定のために重要な期間

がん治療前に大事なこと

がん治療前に大事なこと


このように、がんの病期、すなわちがんのステージ・進行度を決めるのには、いくつかの検査が必要になるので、がんの疑いが発覚してから治療が始まるまでには、通常2~4週間程度の時間がかかります。

「もしがんなら一刻も早く治療を始めてほしい」と、この期間を非常にもどかしく思われるかもしれませんが、前述の質的診断、局在診断、病期診断をしっかり行わなければ、治療方針が決まりません。

今、がん治療は手術、抗がん剤、放射線という3つの治療法を組み合わせて行います。これらをどの組み合わせで、また、どの順番で行くかは、これら3つの診断によって最適なものを決めるのです。

例えば、細胞の種類によって用いる抗がん剤の種類も変わってきます。また、他臓器への転移があるIV期の場合には、基本的には手術は行わずに、抗がん剤や放射線の組み合わせで行う、といった具合です。

さらに、このように分類することで、5年生存率(がんと診断後、5年後に何%の方が生存しているかという比率)を病期によって統計的データとして算定することができます。この20年あまりの間に、がんという病名告知は行われるようになってきました。さらに、近年では、統計的にどれぐらいの予後(今後の生存の見通し)が見込まれるかということを患者さんにお伝えするケースも、少しずつですが増えているようです。このような「予後告知」の際に、これらのステージ・進行度の情報は基本的事項として必要不可欠なのです。

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