余命宣告をどう受け止めればよい?

テレビドラマなどでも時折出てくる余命告知のシーン。私自身も医師になる前、どうして余命がわかるのだろう?と思っていました

テレビドラマなどでも時折出てくる余命告知のシーン。私自身も医師になる前、どうして余命がわかるのだろう?と思っていました

テレビドラマでは、主人公やその家族が、主治医から「あと半年の命です」などと宣告をうける場面が出てきます。あれをご覧になっているせいかどうかはわかりませんが、患者さんやそのご家族から「先生、あと、どれぐらいでしょうか?」と尋ねられることは、医師の多くが経験していることです。

しかしいくら医師とは言え、人の命がどうなるかは解らない、というのが実際のところではないかと思います。その一方で、私自身も、「今日、明日が山場ですね」とか「あと、3ヶ月ぐらいでしょうか」といったことをお伝えすることがあります。現場医師はどのように余命を判断しているのかをご説明しましょう。

統計的データに基づいた余命

がんの場合、治療を始める際にステージ・進行度を確認します。基本的には最も早期の「I期」から最も進行した「IV期」までの4段階に分類します。

がん治療の効果判定は、「5年後に何%の患者さんが生存されているか」ということに基づいて行い、これを「5年生存率」と言います。この5年生存率は、各臓器のがんについて統計的なデータが知られています。これらのデータに基づいて患者さんの大まかな予後を医師は念頭に置いて治療にあたります。

また、医師によってそれぞれ今までの経験があります。それらを踏まえて、例えば、胃がんのこの細胞のタイプで、IV期であれば、こんな感じの経緯をたどることが多かったということを思い浮かべながら、話をすることが多いのではないかと思います。これらの場合には、数ヶ月から数年単位で時間を申し上げることがあるように思います。ただ、患者さんやそのご家族さんから特にお尋ねがない場合には、あまり積極的にお伝えしていないのが現状ではないかと思います。

しかし、近年の医師・患者関係の変化のなかで、患者さんの自己決定権や知る権利ということが言われるようになってきており、積極的にこれらの情報も伝えた方が良いのではないかという意見も増えつつあります。

現在の患者さんの状態から推測する余命

いわゆる死期が迫ってくると、患者さんの状態は、ある程度一定の経過をたどります。それらを見ていれば、概ね数日単位での変化は予測することも可能です。

いわゆる死期が迫ってくると、患者さんの状態は、ある程度一定の経過をたどります。それらを見ていれば、概ね数日単位での変化は予測することも可能です

もう一つは、患者さんの状態が不安定な場合です。これにはがんの終末期の場合もあれば、老衰に伴う場合もありますし、重度の感染症や脳血管疾患、心臓疾患の場合もあります。

このような場合には、患者さんの全身状態(=呼吸状態、血圧、脈拍数など)の推移をみながら、「この1~2週間ぐらいは注意が必要です」とか「今週末がヤマです」といったことを申し上げることがあります。

一般的には、呼吸状態が浅く早くなり、血圧が低下し、尿量が少なくなってくれば、数日単位での変化があるのではないか?と考えながら患者さんの病状を診ていくことが多いと思います。

とは言え、医師も神様ではありませんから、その患者さんの命の炎がいつ消えるのか、などということは、突き詰めていくとやはり「解らない」というのが正しい答えです。余命半年と言われて数年間元気でいらっしゃる方もいらっしゃいます。

私自身は、がんの患者さんには「統計的には○%と言われているけれど、これはあくまで統計的な平均であって、あなたが必ずそうなるというわけではありませんよ」とお伝えし、前向きに治療に取り組もうと申し上げます。また、終末期におられる患者さんのご家族には、病状の自然な変化として起こりうる現象であることをご説明し、人間は誰しも、最期はこのような形で人生を終えていくというお話をするようにしています。

もし、あなたやあなたのご家族が、「余命は○ヶ月です」と言われたときには、今回のお話を思い出してみて下さいね。