がん治療と緩和ケア 

がん治療における緩和ケアのあり方や役割は、この30年ほどで大きく変わってきています。

がん治療における緩和ケアのあり方や役割は、この30年ほどで大きく変わってきています

人はいつか必ずその生命を終えます。現在の日本では、約3割の人ががんで亡くなります。

心臓病、脳出血などの急性疾患で亡くなる場合と異なり、がんの場合は発病から亡くなるまでに時間があることがほとんど。治療法は、患者さんの病状や病態によって異なります。特にがん治療の場合、患者さんの状態によっては「生命の終わり」を意識せざるを得ないことが、他の疾患とは大きく違うところです。

がん治療には、完全な治癒(完治)を目的とした治療と、がんの痛みや苦しみを和らげるための治療があります。後者の治療を「緩和ケア」と呼びます。従来の我が国ではあまり重要視されてこなかった分野ですが、この30年ほどの間にその役割が大きくなりつつあります。
 

緩和ケアとホスピス

患者さんの痛みや苦しみをいかに和らげるかということを目的として緩和ケア。特に、かつては生命の終わり、すなわち先にある死を前提とする点で、病気の完治を目的としている一般の医療とは大きく異なりました。このとき出てきたのが「ホスピス」と言う概念。日本では1977年に淀川キリスト教病院に開設されたのが始まりとされています。

緩和ケアと一般の医療は、従来、非連続的に提供されてきました。すなわち、完治を目指した治療が不可能だということを医療従事者と患者さん双方が認識した時、「完治を目指す治療を止めた上で、緩和ケアに移行する」という考え方だったのです。

しかし、この10年ぐらいの間で、緩和ケアと一般の医療は連続的なもので、継ぎ目なく移行していくものに変わってきました。治療が難しいものだけでなく、治療を続ける中でも、不要な痛みや苦しみを和らげる緩和ケアやホスピスが取り入れられるようになり、治療の中での比率が変わってきたのです。これに伴い、ホスピスのあり方も大きく変わってきています。
 

変わりつつあるホスピスのあり方・役割

病院だけでなく、自宅でも緩和ケアを受けられる「在宅ホスピス」という形態も広まりつつあります。

病院だけでなく、自宅でも緩和ケアを受けられる「在宅ホスピス」という形態も広まりつつあります。

まず、緩和ケアを行う病棟が、特別なものではなくなりつつあります。一般の病院でも緩和ケア用の病棟が整備され、それまで治療を受けてきた病院から転院することなく、緩和ケアを受けることが可能になってきました。

また、在宅医療の体制の整備が進んできたことで、自宅で緩和ケアを受ける「在宅ホスピス」という形態も可能になりつつあります。

これらの背景には、痛みのコントロールや苦痛の緩和などの手法が確立され、痛み止めなどの医薬品も飲み薬を中心に開発が進み、臨床現場で用いられるようになってきたことや、緩和ケアを行う医療チームが、病院や在宅医療の現場に整備されてきたことが挙げられます。

緩和ケアを受ける場所は、治療を担当する主治医から紹介されることが多いですが、ご自身で情報収集することもできます。国立がんセンターが運営するがん情報サービスのサイトでも、緩和ケア病棟を持つ病院を探せますのでご活用下さい。
 

ホスピスの費用

ホスピスでの医療も特殊なものではなく、通常の保険診療の一環として行われます。しかし、使用する薬の費用が高かったり、高度な医療処置が必要な場合もあるため、医療費そのものが高額になるケースもあります。

そんな場合でも、一定額(入院の場合、月額で最高約9万円程度)を越える分は還付される「高額療養費制度」がありますし、長期にわたる自宅療養が必要な場合でも、患者さんの状態によっては「介護保険」を併用することもできます。極端に高い自己負担が発生することなく、緩和ケアを受けられる仕組みが整えられていますのです。

このような制度は、厚生労働省のサイトも紹介されていますし、病院ではメディカルソーシャルワーカー(MSW)などがこのような支援をしてくれます。

色々な制度を上手に活用し、安心して緩和ケアを受け、自分らしい生き方、そして人生のしまい方を考えていく。そういう時代は、もうすでに到来していると言えるでしょう。

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