感染症/ヘルペス

ヘルペスの特徴・症状・治療法

ヘルペス科ウイルスによる病気の一番の特徴は、症状のない潜伏感染と再発。特に口唇ヘルペスや性器ヘルペスの再発には多くの人が悩まされています。症状と具体的な治療法について、わかりやすく解説します。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

ヘルペスの原因

口唇ヘルペスは再発します

再発しやすい口唇ヘルペス。あまり知られていませんが、水ぼうそうや帯状疱疹もヘルペス科のウイルスが原因

口唇ヘルペスや性器ヘルペスはもちろん、水痘(水ぼうそう)や帯状疱疹の原因になるのがヘルペスウイルス。一言でヘルペス科のウイルスといってもその種類は様々で、単純ヘルペスウイルスや水痘・帯状疱疹ウイルスを始め、伝染性単核球症(EBウイルス)、サイトメガロウイルスなど、ヒトに通常感染するものだけでも亜種を入れると全部で9種類あります。ヘルペス科のウイルスの主な特徴は以下の通り。

  • 免疫系が完全には排除できない神経系や、免疫担当細胞に潜伏感染する
  • 潜伏感染では無症状でも唾液、粘液、血液中にウイルスがいる
  • 母子感染するウイルスがある
  • 初感染では症状がはっきりしない不顕性感染(症状が出ない感染)もある
  • 特定のウイルスに対する免疫力が落ちると症状が出る
  • 抗ウイルス剤が開発されているウイルスもある

ヘルペスの症状・感染力

感染するウイルスと発症する病気によって症状も様々。口唇ヘルペスや性器ヘルペスの場合は、局所、口や生殖器の周囲の発疹が特徴。水ぼうそうの場合は頭皮を含む全身の発疹、帯状疱疹の場合は体の片側半分だけの帯状の発疹が特徴です。逆に皮膚の症状がはっきりせず、発熱やリンパの腫れなど他のウイルス感染と似ていて、ヘルペスらしい特徴がない場合もあります。

また、ヘルペスウイルスは感染力の強さも特徴のひとつ。成人するまでに多くの人が複数のヘルペス科のウイルスに潜伏感染していると考えられます。

ヘルペス再発の原因・きっかけ

通常ヘルペスの再発というと、「口唇ヘルペス」や「性器ヘルペス」の再発を指すことがほとんど。ヘルペスウイルスに対する免疫力が低下した場合に起こるため、睡眠不足や不規則で偏った食事、仕事上のストレスなどが再発のきっかけになります。

再発した場合は自然治癒傾向があるので、抗ウイルス剤を積極的に使うかどうかは医師でも意見が分かれるところ。ヘルペスに対する抗ウイルス剤の売り上げが多いのは確かですが、口唇ヘルペスでは経過観察することが多いようです。

ヘルペスウイルスの再発には、アミノ酸のアルギニンとリジンという成分が関係すると考えられています。アルギニンはヘルペスウイルスの増殖を促進する働き、リジンはアルギニンに拮抗して増殖を抑制する働きがあると推定されます。アルギニンは肝臓での尿素の代謝に関係しているため、体内に大量にあり、ヘルペスを増殖させるからと言って、この量を減らすことはできません。

一方でリジンは食物から摂取できるので、食生活を工夫することで再発予防に役立つと考えられています。リジンが多く含まれている食品は以下の通り。
  • 赤身の肉(豚肉、牛肉等)
  • 乳製品
  • 魚(タラ、イワシなど)
  • 豆類(豆腐や納豆などの加工品を含む)
など。なお、リジンが直接感染予防に役立つわけではありませんが、増殖を抑制するので、再発をある程度抑える効果が期待できます。

即効のダイエット効果があるとされている穀物(玄米を含む)と野菜中心の食事だとリジンの摂取が難しくなるので要注意。特にこれまで口唇ヘルペスや性器ヘルペスにかかったことがある人は、ダイエット中でも工夫して蛋白質を摂取するようにしましょう。

ヘルペスの治療法

通常ヘルペスと呼ばれるのは、「単純ヘルペスウイルス」。ウイルスの増殖の条件からみると単純ヘルペスと水痘・帯状疱疹ウイルスは似ているので、同じ抗ウイルス剤が有効。抗ウイルス剤は内服、点滴、外用薬の剤型があります。内服の抗ヘルペス剤は病院の受診が必要な処方薬。口唇ヘルペスに対しては、抗ウイルス剤を含む外用薬が市販されています。

ヘルペスが疑わしい時に受診すべき科

病気によって受診すべき科が変わります。
  • 口唇ヘルペス……皮膚科の受診が一般的
  • 小児の水ぼうそう……発疹の出始めはまず皮膚科受診でもOK。水ぼうそうが疑われた時点で小児科にに回されることが多い。皮膚以外の症状がある場合は、直接小児科でも問題ない
  • 成人の水ぼうそう……まずは皮膚科を受診。水ぼうそうが疑われる場合は内科を紹介される
  • 性器ヘルペス……男性は泌尿器科、女性は婦人科を受診するのが一般的
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