咳が続きませんか? ガイドの著書『咳事典 咳を科学する その咳、大丈夫?危険!』でも書かせていただきましたが、注意しないといけない病気に「百日咳」があります。百日咳の症状と原因について説明します。
百日咳の症状
発熱をする事は少なく、咳がひどいのが百日咳の特徴
百日咳になると約100日間咳が続きます。経過は咳の軽い時期、ひどい時期、治っていく時期の3つに分けられます。
■咳の軽い時期(1~2週間)
風邪のような症状で、鼻水や咳が1~2週間続きます。
■咳のひどい時期(2~3週間)
この時期になると、百日咳に特徴的な咳が出始めます。短い連続した咳が「コンコンコン」と5~10回発作的に続きます(スタカットと言います)。その咳が終わると「ヒィー」と息を吸い込む咳をします(ウープと言います)。このような咳を繰り返す事を「レプリーゼ」と呼びます。レプリーゼは夜に悪化しやすいです。
生まれたばかりの子供や1歳以下の子供の場合、百日咳特有の咳はなく、呼吸を止める無呼吸や顔色が悪くなるチアノーゼが見られます。そのため、重症になってしまいやすいので注意が必要なのです。
■治っていく時期(2~3週間以上)
咳の程度も回数も次第に軽くなっていきます。
上記のような経過をたどるのが特徴ですが、DPTワクチンを接種している人や大人の場合は、これらの典型的な症状がなく、何となく咳がひどい程度の自覚しかないこともあります。百日咳という自覚がないまま、小さな子供に感染させる可能性があるので要注意です。
百日咳の原因
百日咳の原因は、「百日咳菌(Bordetella pertussis)」という菌。この菌の出す毒素によって、咳がひどくなります。「パラ百日咳菌(Bordetella parapertussis)」も百日咳を起こします。この菌は唾や咳などによる飛沫感染と、百日咳菌に汚染されたものに触ることで感染する接触感染で広がります。感染してから症状が出るまでの潜伏期間は7~10日前後です。
百日咳の合併症
百日咳になると、以下のような合併症を起こすとがあります。
- 肺炎
- 脳症
- 痙攣発作
特に生後6ヶ月未満の子供には合併症が多く、肺炎の頻度は22%、痙攣発作は2%程度見られます。
百日咳の診断
症状を診るのに加え、百日咳は細菌によって起こるので、ノドや鼻をこすった綿棒から採取できたものを容器にうつし、細菌が増えるかどうかみる「培養方法」で確定診断をするのが確実です。百日咳の遺伝子検査もありますが、研究機関でしか行っていません。血液検査も百日咳かどうかの診断の助けになります。血液検査では、百日咳そのものに対する抗体はないか、百日咳の毒素に対する抗体はないかをチェックします。また、百日咳の毒素は血液中の白血球を増やすので、血液検査で白血球の増加や、特にリンパ球という白血球の増加が確認できた場合、百日咳を疑います。
百日咳と診断された場合は適切な治療が必要です。