ベーチェット病は原因が解明されておらず、根本的な治療法も確立されていません。ベーチェット病の症状はストレスや不規則な生活、偏食などで出てくることが多いため、まずは生活を工夫し、症状が出てきた場合は対症療法を行うことが対策の中心となります。
生活面でできるベーチェット病対策
口内炎ができやすいので、普段からうがいなどを心がけ、口腔内を清潔に
ベーチェット病の特徴的な症状である皮膚や陰部、口腔内の潰瘍はよくなったり悪くなったりするため、改善時の生活を整えて症状を出にくくすることが大切。まずは基本の生活リズムを整えましょう。
- 十分な休養とバランスの取れた食事、十分な睡眠
- 毎日の歯磨き、うがい
- 禁煙
ベーチェット病の治療薬
ベーチェット病の症状が出た場合は、それぞれの症状に応じた治療を行います。
■眼の症状にはステロイド点眼薬
炎症がある場合は、炎症を抑えるステロイド点眼薬。瞳の周りの虹彩に炎症がある場合は、瞳を拡げる働きを持つ「散瞳薬」の点眼を行います。重症化した場合は、ステロイドを眼の炎症部分に注射したり、全身投与することになります。炎症が治まってからは再発予防のために「コルヒチン」という薬を使います。
ステロイドでも治療が難しい場合は、免疫抑制薬であるシクロスポリン、インフルキシマブという炎症に関わるタンパク質をブロックする抗体を使います。
■口内炎や陰部の潰瘍には外用薬
ステロイド外用薬を使用。口内炎の場合、口にも使用できるステロイド外用薬を使います。コルヒチン、セファランチンなどの天然由来の有機化合物は、皮膚症状に効果があります。
■関節炎にはコルヒチンと鎮痛剤
関節の痛みにはコルヒチンが有効。非ステロイドの抗炎症薬である鎮痛薬として使用します。それでも関節炎が続く場合はステロイドを内服。ステロイドを長期に内服すると、病原体に感染しやすくなる他、肥満、高血圧、眼が見えなくなる白内障や緑内障などの副作用のリスクがあるため、できるだけ服薬期間を短くできるよう主治医の指示を仰ぐようにしましょう。
■血管型ベーチェットにはしっかり免疫抑制
ステロイド内服とアザジオプリン、シクロフォスファミド、シクロスポリンなどの免疫抑制薬を併用。免疫異常で自分の血管が破壊されてしまう状態なので、炎症をしっかり抑える必要があります。血管型ベーチェットの場合は全身の血管が問題になるため、全身性の症状で炎症の強いSLEの治療と同様、免疫抑制薬が有効なのです。
■腸管型ベーチェットにはステロイドと抗炎症薬
炎症を抑える薬が中心で、ステロイド、炎症を抑える薬で主に慢性の腸疾患(クローン病、潰瘍性大腸炎)に使用されるスルファサラジンとメサラジン、免疫抑制薬であるアザチオプリンなどを使用。ステロイドは少しずつ減らし長期使用を避けたいところですが、なかなか治りにくいために中止しにくいのが現状。その場合は「インフルキシマブ」という炎症に関わるタンパク質をブロックする抗体の効果が期待されていますが、日本ではまだ保険診療として認められていません。
腸管型ベーチェットはしっかりと治療しないと、炎症によって腸管から出血したり、腸管が破れる危険性があります。腹痛や下血などの症状にも注意が必要。万一、腸管が破れてしまった場合は手術が必要になります。
■神経ベーチェットにはステロイド大量療法
脳炎や髄膜炎などの場合は、ステロイドを短期に大量に使用するステロイドパルス療法を行います。リウマチやSLEに使用されている免疫抑制薬であるアザチオプリン、メソトレキサート、シクロホスファミドなどの併用が試みられることも。ステロイド治療で治っても再発することがあり、次第に慢性型に進行するケースもあるため、医療機関での継続的な経過観察が必要。特に、精神症状、人格変化などの症状が見られた場合は治療に難渋することが多く、現時点では有効な治療方法が見つかっていません。神経ベーチェットの場合は眼の症状に有効なシクロスポリンが神経症状を悪化させると報告されているため、眼の症状がある場合もシクロスポリンは使用しません。
ベーチェットの経過
重症化が心配な眼の症状がなく、上に挙げた血管型ベーチェット、腸管型ベーチェット、神経ベーチェットの症状も見られない場合は、口内炎や陰部潰瘍を繰り返す以外は生活に大きな支障がないことがほとんど。
眼の症状がある場合は、発症後視力が0.1以下になるのが40%と言われていましたが、シクロスポリンによる治療が始まってからは半分の20%まで悪化率が改善しております。
血管型ベーチェット、腸管型ベーチェット、神経ベーチェットの場合は経過も長くなってしまい、治療に難渋することがほとんど。上記に挙げたさまざまな治療を組み合わせたり、新薬開発を進めたりと、より効果的な治療法の発見が試みられています。