日本人のインスリン分泌能力は欧米人に比べると低いので、治療の最初からインスリン分泌を促進する「スルホニル尿素(SU)薬」が使われることがあります。ところがしばらくすると効果がなくなってくることがあります。分かりやすく解説しましょう。

薬の「一次無効」「二次無効」とは

経口薬

経口薬

人によっては始めから十分に薬が効かないこともあり、これを「一次無効(primary failure」と呼びますが、途中から効果がなくなることは「二次無効(secondary failure)」と呼びます。いろいろな原因が考えられますが、患者としては嬉しいことではありません。

日本人の一次無効と二次無効がどのくらいの頻度で起るのかよく分かっていませんでしたが、2008年の日本糖尿病学会でとても興味ある発表がありました。これによると「2型糖尿病でスルホニル尿素薬を初めて服用した人の30%に一次無効がみられ、10%の人に二次無効がみられた」ということです。

意外に多くの人に薬の無効が起きていますね。発表者はつくば糖尿病センター、川井クリニックの川井紘一院長です。

経口薬療法は見直しも課題に?

早期発見、積極的な治療のお陰で、糖尿病患者の寿命は10~20年前に比べて数年単位で延びています。皮肉なことにそれに伴って合併症のある患者数も急増しています。合併症は血糖コントロールが悪いとリスクが高くなるのは分かっていますが、今だけでなく糖尿病になってからの「累算された高血糖の負荷」も注目されています。

患者も医師も本気になれば現在の血糖値はコントロールできますが、過去の高血糖の累積にはなすすべがありません。

合併症の要因の一つに、効かない薬を血糖値が高いまま漫然と使い続けている医療サイドの問題があります。とかく2型糖尿病は患者が医師や栄養士の指示に従わないことが強調されますが、患者も自己反省するように刷り込まれていますので、本当の原因はなかなか分かりません。今回の論文で提起されたように、こんなにも一次無効、二次無効が多いとなれば経口薬療法の見直しが必要です。

一次無効、二次無効の世界的な定義がないため、川井紘一医師の研究では次のようにしました。
  • 一次無効:HbA1Cが一度も6.5%以下にならなかった場合
  • 二次無効:HbA1Cが一旦は6.5%未満となったが、その後3回以上8.0%以上になった場合
医師は高血糖を患者のせいにしないで、迅速な治療法の変更、あるいは失効しにくいように経口薬のコンビネーションに切り換えてもらいたいものです。アメリカの論文には、A1C 8%(日本換算7.7%)といった従来の見直しレベルよりもA1C 7%未満(日本換算6.7%)という目標値を達成する方が予後が良いというものがありました。そして2004年よりアメリカでは特別の場合を除いて全ての糖尿病患者はA1C 7%未満(日本換算6.7%未満)を目指すことになっています。

糖尿病の薬が効かなくなる原因

2型糖尿病はゆっくりとインスリン分泌能力が低下する病気です。それには個人差も大きく、生活習慣も影響します。ですから、すでにベータ細胞にインスリンを十分に生成する力が無いのならスルホニル尿素薬で刺激しても無効です。

また、経口薬は食事の不節制をカバーするほど強力なものではありません。食事や運動を守った上での薬の効果ですから患者の生活習慣の見直しも必要。加齢や肥満によるインスリン抵抗性もあります。

いずれにしても2型糖尿病はいろいろな薬が血糖コントロールに対して効果が低下するものと考えられています。でも、いざとなればインスリンがありますから大丈夫ですよ。

一次無効・二次無効になった人の共通点

川井紘一医師らの研究では一次無効、二次無効となった人の特徴も調べています。それによると一次無効も二次無効も、どちらも「女性に多くみられる」、「スルホニル尿素薬開始時のHbA1Cが高い」ことが分かりました。
さらに一次無効は「年齢が低い」「罹病歴が長い」「開始後のBMI増加」「開始後のインスリン分泌量が低い」ことが分かりました。
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